1日単位、短時間などスポット的に仕事をするワークシェアリングの働き方が、介護現場に浸透してきている。【Joint編集部】
その手軽さもあって人気が高まり、サービスの認知度も以前より格段に上がった。全く新しいスタイル、という触れ込みは既に過去のもの。今や定着期・拡大期に入っている。
事業者からみても、人材を欲しい時に欲しい数だけ集められること、その中で長期採用につなげるチャンスを得られることなど、何かとメリットが多い。人材確保が事業の行方を左右するカギとなるなか、この仕組みを試し始めるところが多くなっている。
現場の支持を広げているのは、単発アルバイトを希望する人と受け入れたい介護施設・事業所をマッチングするアプリ「Ucare」だ。最近の大きな変化は、介護職員だけでなく看護職員の登録者数、マッチング数も増えていることだという。
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いま何が起きているのか。まずは専門家の話を聞くことにした。この分野に精通する東洋大学・ライフデザイン学部の高野龍昭准教授に、看護職員の人手不足の最新動向や今後の見通しなども含め、背景要因を教えてもらった。
◆ 看護師不足、今後ますます深刻に
−− 介護現場の看護職員について、足元の人手不足の状況をどうみていますか?
極めて深刻な状況と言わざるを得ません。福祉人材センターのレポートによると、昨年10月の有効求人倍率は介護職員が4.85倍、ホームヘルパーが6.25倍となっていますが、介護・福祉分野の看護職員はそれよりもはるかに高く、18.52倍となっています。
これはコロナ禍に伴う一時的な問題、ではありません。これまで何年も続いてきた長期的なトレンドです。看護職員の人材確保は介護職員よりも更に難しい、というのが正しい認識だと考えています。
−− 看護職員の人手不足は今後どうなっていくとみていますか?
残念ながらますます深刻になっていくでしょう。高齢化に伴って介護サービスのニーズが拡大していくなか、国も介護現場の看護職員を大幅に増やす必要があると推計しています。
一方、現役世代の人口そのものの急減が同時に進むことが明らかになっていますから、状況は更に厳しさを増していくと言わざるを得ないでしょう。
このままいけば、人員配置基準を満たすだけの看護職員を確保できない事業所が出てくる懸念もあります。事業者には、従来の発想・方法にとどまらない様々な取り組み、創意工夫が求められます。もちろん簡単ではありませんが、その成否が事業を継続するうえで大きな意味を持つことになるのではないでしょうか。
−− スポット的に働けるワークシェアに関心が集まっています。
雇う側、雇われる側、双方のニーズに応えているからではないでしょうか。
人手不足が深刻化するなか、雇う側は欠員をうまく埋められる仕組みを必要としています。雇われる側にとっても、自分の生活の中で空いた時間を有効に使って働けるのは魅力的でしょう。色々な事情で一線の現場を退いていたり、子育て中でフルタイムが難しかったりする「潜在看護職員」は大勢いるんです。そうした看護職員の就労ニーズを見つけ出し、介護現場と結びつけていくようなサービスはとても有効だと思います。
人材紹介・マッチングのサービスには、事業者を悩ませる高額な手数料がやり玉に上げられるケースもあります。こうした問題を大きくしない、あるいは小さくするような道を歩み、ワークシェアの仕組みも健全に発展していって欲しいと願っています。
−− ありがとうございました。
◆「単発バイトには切実なニーズがある」
次に、「Ucare」を実際に採用している事業者を取材した。全国規模で有料老人ホームやデイサービス、居宅介護支援、訪問看護などを展開する株式会社介護NEXT。本部で人材開発などを担当する花本菜摘さんが実情を語ってくれた。
−−「Ucare」を導入することになった経緯を教えて下さい。
職員に有給休暇を取得してもらったり、ご利用者様が多い日のサービスを手厚くしたりすることを目的に導入させて頂きました。もともと派遣を利用していたのですが、職員が急に欠勤した時などに手軽に活用できる利便性も導入判断の一つでした。
−− 現在の活用状況を教えて下さい。
関東を中心として、新たな人材を必要としている事業所のほぼ全てで「Ucare」を使っています。職員が怪我で長期の休みを必要としたケースで、1ヵ月に延べ20人の単発バイトに来てもらった、という事業所もありました。今後も積極的に活用していこうと考えています。
−− 成果は出ていますか?
登録しているワーカーさんの人数が多いため、決定率はかなり高いです。例えば昨年12月は多くの募集をかけましたが、その9割以上で無事にマッチングすることができました。
お気に入りの事業所を登録できる「Ucare」の機能を使い、リピートして働いてくれるワーカーさんも増えてきました。特定の曜日にリピートして頂けるワーカーさんは、ご利用者様も顔なじみになるのでコミュニケーションなどは常勤職員にも引けを取りません。
半日のデイサービスにも有効で、弊社ではよりマッチングしやすい傾向にあります。小さいお子さんがいらっしゃる方を中心に、短時間でスポット的に働きたいという切実なニーズがあるんだなと実感しています。
−− ワークシェアは長期採用にもつながりやすいと聞きましたが、実態はどうですか?
そうですね。やっぱりつながりやすいと思います。弊社では昨年12月にも、実際に単発バイトから長期採用へ移行できたケースが生まれました。これまでの事例では、利用者様の「また来て欲しい」という言葉が正規職員になるきっかけとなった、という素敵な話もあるんです。
ここの雰囲気、または他の職員が良くて働きやすいから、という理由で、自宅から遠い事業所をあえて選ぶ方もいるんです。実際に働いてみて、「楽しい」「いいな」と思ってもらえることが大きいようですので、我々もそうした職場作りを心がけています。
◆「こんなにウィンウィンな仕組みもない」
−− 良い人材を採用できますか?
「Ucare」を経由して就職される方って、短期間で辞めてしまうことが少ないんです。
まずスポット的に入って色々と確かめられる仕組みですから、「期待と違った」「思っていたのと違った」というミスマッチを防ぐことができます。これは雇う側、雇われる側の双方にとって、非常にメリットが大きいのではないでしょうか。実際に仕事をしてみないと分からないことって、やっぱりお互いに多いですよね。
−− 費用対効果の面ではいかがですか?
他と比べると安くすみますね。早期離職のリスクを最小化できる、という点がここでも強みになるんです。
高い紹介料を払ったのにすぐに辞められてしまった…。一般的な人材紹介サービスの場合、そんなケースもありますよね。我々はトータルでコストを低く抑えられると考え、「Ucare」を積極的に活用しています。
−−「Ucare」を評価されているようですね。
雇う側、雇われる側の双方にとって、こんなにウィンウィンな仕組みもないなと思います。自分に合った職場に巡り合うこと、希望する人材を見つけることって本当に素晴らしいですが、必ずしも簡単ではないですよね。これを後押しするサービスって、介護業界には今まであまり無かったのではないでしょうか。
最初はあくまで単発バイトですから、お互いに割と胸襟を開いた話もできるんです。これが就職の面接だったり実際に就職した後だったりすると、そううまくはいかないケースが増えますよね。我々としては、こうしたメリットを生かさない手はないと考えています。
−− ありがとうございました。
◆「有資格者だけだから安心」
最後に、ユーケアを実際に使っている事業所を訪問した。介護NEXTが東京都国分寺市で運営する通所介護「GENKI NEXT」。どのような人材が来るのか、どのように運用しているのか、管理者の小林由美さんに伺った。
−−「Ucare」を活用するのはどんな時ですか?
急に欠員が出そうになる時は特に欠かせません。シフト調整を行った結果、職員のお休みなどで「どうしてもこの日が足りないな」という時や、ご利用者様が多い日にサービスが手薄になりそうな時なども、よくお世話になっています。募集をかけるとすぐに集まることが多く、本当に助かっています。
−− どのような人材が来ますか?
子育て中のお母さんだったり、他の介護施設で働いている専門職だったり、全く違う業界に身を置く会社員だったり…。本当に色々な方がおられますね。ワーカーさんとして登録できるのは有資格者だけですから、基本的にはしっかりした方が来てくれます。スポット的な働き方で介護現場へ来るくらいですから、やはりこの業界に興味を持っている方が多いのではないでしょうか。
年齢層が高めの看護職員、介護職員も少なくないことは意外でした。今はフルタイムで働くほどでもない、という方がアプリを使って応募してくるんです。若者はエネルギッシュでいいですが、ベテランには経験豊富で熟練した方が多いですよね。安心できるスキルを持った方が来てくれる確率が高いんです。
−− 事業所に慣れていない外部の人が頻繁に来ると、何かと大変ではないですか?
もちろん、長く働いている職員と比べると差はありますが…。大まかなスケジュールや業務内容、注意点などを事前に共有しておけばほとんどが業務上の問題もなく力になってくれます。
最初は周辺業務など、できることから手伝ってもらう感じですね。利用者様とうまくコミュニケーションが取れない時などは、我々が間に入ってサポートします。場合によっては技術的な助言も必要になるでしょう。
決してマイナスの要素だけではありません。新しい職員が入ると、既存の職員が変化を楽しんだり刺激を受けたりするメリットも得られます。ご利用者様に最高のサービスを提供するという視点でも、我々にとってはやはり非常にありがたい仕組みだと思っています。
−− ありがとうございました。
「Ucare」はパソコンやスマートフォンなどで簡単に始めることができる。初期費用、月額費用は完全無料。給与の振り込みなど面倒な事務を丸投げできるなど、介護現場の負担を最小限に抑える設計も魅力の1つだ。人手不足が深刻化する看護職員・介護職員との出会いを広げるために、まずはワークシェアの仕組みを使い始めてみてはどうだろうか。
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