今後の介護報酬改定はどんな内容になるのだろうか。遠い将来の話ではない。次の2024年度をめぐる国の議論が本格化するまで、既に残り1年余りのところまできている。【Joint編集部】
基本報酬の継続的な引き上げは期待できず、むしろ引き下げられていくのではないか − 。
事情通が揃って口にする一般的な認識だ。国の厳しい財政状況を考慮すれば、こうした悲観的な予想が現実のものとなっていく公算は大きい。議論の行方はまだ誰にも分からないが、少なくとも事業者は起こりうる事態に今から備えておかなければいけない。
言うまでもなく、何より重要となるのは各種の加算だ。これをうまく取得できるかどうかが今後の事業運営の成否を分ける、と言っても過言ではない。収益をしっかりあげて職員に還元していかなければ、人材確保をめぐる同業との競争にも敗れていくことになるだろう。
◆ 普遍的な“加算取れない問題”
もっとも、新たな加算の取得は口で言うほど簡単ではない。これは現場のコンセンサスだ。
制度はますます複雑になり、報酬改定の内容を把握するだけでも多大な労力を要する。人手不足が深刻さの度合いを増すなか、職員は業務が増えて以前より更に忙しくなっている。もし何かミスがあれば、実地指導(運営指導)の際に報酬の返戻を迫られるかもしれない…。そんな不安も常につきまとう。
加算の取得が必ずしも十分に進まない要因は、決して現場の怠慢などではない。全国で多くの介護施設・事業所が、加算を取得したくてもできない切実な状況に直面している。これは構造的な話で、業界全体の普遍的な課題と言っていい。加算の取り組みが広く展開されなければ、国の施策は届かずサービスの質の向上にもつながっていかない。
◆ 加算取得の影響額を事前に算出
こうした現状を踏まえ、抜け目のない経営者は便利なツールに高い関心を寄せている。一連の業務を大幅に効率化でき、かつ適切に進められるソリューションが強力な味方になるためだ。
期待を集めているプロダクトの1つに「miramos(ミラモス)」がある。コニカミノルタが新たに開発したこのWebアプリは、介護施設・事業所ごとに取得を検討すべき加算を特定し、それを取得した際の影響額も素早く算出。取得までの一連の作業工程を、国のルールに沿って分かりやすく明示する。必要な書類の様式も併せて提供する。
*「miramos」の詳細は↓の画像から
クラウドなので作業の進捗状況はいつでも、誰でも確認可能。利用者の状態確認や担当者会議の開催など、忘れがちな定期業務のタイミングはアラートで知らせてくれる。作成した書類は一元的に管理でき、実地指導で要求される資料も簡単に引っ張り出せる。
もちろんLIFEにも対応済み。シフト管理ツールとしても活用でき、それに付随する機能も便利だ。入力した情報に基づき、例えば「あと1人加配すれば“体制強化加算”を取得できる」などの助言を得ることができる。現在は特別養護老人ホームでの使用に特化しているが、コニカミノルタはこれから対象サービスの範囲を広げていく方針だ。
神戸市の社会福祉法人「光朔会」では、既に特養で「miramos」の導入を始めている。施設を尋ねて取材した。まずは山口宰常務理事を直撃。抱えていた課題や導入の効果などを詳しく語ってもらった。
◆「加算の業務は属人的になりがち」
−−「miramos」の導入前、加算の取得についてはどんな課題がありましたか?
やっぱりどうしても後手後手になってしまう、ということでしょうか。職員は日々のケア、業務に追われています。報酬改定の動きをキャッチアップし、加算の要件などをしっかりと学んだうえで実践してもらう − 。これを現場に徹底させることって、かなり難しいと言わざるを得ません。
制度はどんどん複雑になりますし、変化のスピードもかなり早いですよね。行政からの急な通知だってあります。現場の職員がもう少し楽に取り組めるようにしなければいけない、と強く思っていました。
−− 職員の業務は増えるばかりだと聞いています。
はい。それでもできることから取り組むわけですが、結果として加算の業務が属人的になりがちなことも良くないと感じていました。この職員でなければ分からない、進められないということが多くなってしまうんです。
たとえお休みに入ったりポジションが変わったりしても、新たに取り組む職員がしっかり対応できなければいけません。そうした十分な体制を構築することも課題だと考えています。
−− 介護職は事務作業が苦手、という声もよく聞きます。
それはやむを得ません。彼らは介護・福祉の分野を専門に学んできたり、現場でサービスを磨いてきたりした人達です。しっかり教えてもいないのに、いきなり「マネジメントをしろ」「書類を作成しろ」なんて求めることに無理があります。その中でなんとかやりくりしているのが実情です。
よく「生産性向上が必要」と言われますが、その中心はケアの部分ではなくマネジメントの部分ではないでしょうか。マネジメント領域の生産性の低さが介護業界の課題です。OJTなどで介護職を教育していくことも大事ですが、それだけでは限界があると言わざるを得ません。テクノロジーの力を借りることが絶対に欠かせないと感じています。
−−「miramos」を選んだ理由を教えて下さい。
ありそうでなかったソフトだからです。同様の機能が一部に内包されているシステムは知っていますが、ここまで特養の加算取得に特化したものは見たことがありませんでした。
◆「業務の見える化が協働の土台」
−−「miramos」の導入により、どんな効果が得られましたか?
それはやっぱり業務負担の軽減でしょう。やるべきことが明確になるって非常に大きいんです。
加算を取得する際は通常、算定要件を満たしたりルールに合わせたりするために必要な情報収集から始めますよね。「miramos」が必要な情報を全て提供してくれるので、そうした手間が大幅に軽減されました。加算の取得に直結する具体的なプロセスに早々と着手できるようになったんです。業務の指針というか、信頼できる拠り所を与えてくれるので、迷わず真っ直ぐに突き進むことができるようになりました。
−− 他に何かメリットはありますか?
いつまでにこれを済ませる、というチェックポイントが明確に分かるところ、取り組みの進捗状況を皆で把握できるところも長所だと感じました。
業務の“見える化”は職員間の連携・協働を育む土壌に欠かせない要素です。私のような経営者の立場から見ると、各職員の仕事を適切に評価することにもつなげられます。特定の職員に頼ってしまう属人化を防ぐ観点からも、非常に重要なことではないでしょうか。
このほか、実地指導の際などに必要な書類を確実に管理していけるところも便利だと思います。
−− 収支面はいかがでしょうか。
当然、加算が取得できるようになったので収入は上向きました。我々の施設では、年間で約312万円分の加算の取得漏れがあると「miramos」に診断されました。まだ全てではないですが、こうした損失をリカバーすることができています。
加算はあくまで加算ですが、経営への影響は決して小さくありません。そもそも、こうした診断を事前に受けられること自体が大きなポイントではないでしょうか。
−− 加算取得の影響を前もって把握できる、ということですね。
加算の取得には一定のコストがかかります。手厚い人員配置が算定要件となっているものもあり、闇雲に取り組めばかえって赤字になってしまうこともあり得るでしょう。
「miramos」ならその加算に取り組むべきかどうか、事業所の実情を踏まえて的確に判断することができます。これは新しいですよね。今までになかった発想の機能ではないでしょうか。
−− ありがとうございました。
◆「直感的に操作しやすい」
続いて介護現場へ伺った。話を聞いたのは、日々の業務の中で「miramos」を活用している2人の職員さん。ユニットリーダーの山本拓磨さんと、生活相談員・ケアマネジャーの谷口裕亮さんだ。実際に使ってみてどうだったか、思ったことを率直に教えてもらった。
−−「miramos」を活用していると聞きました。
谷口さん:昨年の11月頃からです。これまで7〜8ヵ月ほど使ってきました。
−− 使い勝手、操作感はいかがですか?
谷口さん:今のところ概ね気に入っています。非常に情報量が多く、トップ画面などがごちゃごちゃしている印象のシステムもあるのですが、「miramos」には“整頓された優しい作り”という印象を持ちました。直感的に使いやすいと思います。
山本さん:「miramos」の場合、1つのことを入力すると次にすべきことの指示が続々と出てくるんです。それが分かりやすくて助かりますね。
いったん入力し終わった後、次の業務のタイミングが来ると通知も来ます。打ち込みを忘れなくて済むのでかなりありがたかったです。例えば国のLIFEの場合、こちらが業務を忘れてしまったらそれで終わり…。そこに大きな違いを感じました。
◆「加算取得は大きなプレッシャーだった」
−− 特に気に入っている部分があれば教えて下さい。
山本さん:やっぱり実地指導に対する不安がなくなることですね。加算を取得するために懸命に頑張っても、もし算定要件の解釈が違ったり書類に不備があったりすれば、報酬の返戻など大きな迷惑をかけてしまうことになるでしょう。私達はかなり大きなプレッシャーを感じています。というか物凄い怖いんですよね。
ですから必死になって調べるわけですが、ネットに出ている情報が全て正しいという確証もありません。周囲の人に聞いても分からないことばかり…。そもそも私達は、利用者さんのことを最優先として仕事にあたっています。加算の制度をつぶさに調べ上げる時間はなかなか作れないので、常に不安がつきまとう状況に陥るんです。
「miramos」はこうした課題を解消してくれます。何を、どの順番で、どのように進めればいいのか、以前より簡単に把握できるようになりました。こうして拠り所となってアシストしてくれるところが、私の中では最も大きなメリットだと感じています。
−− 心理的な負担の解消にもつながるわけですね。
谷口さん:安心材料を多く与えてくれますからね。私としては、取り組みの進捗状況をクラウドで把握できる点を推したいです。例えば今、管理栄養士の職員と共に業務を行っているのですが、離れていても相手がどこまで進めたかすぐに分かります。向こうが終わったらこっち、こっちが終わったら向こう、という様に、自然と滞りなく進められるのでかなりの効率化につながります。
−− どうもありがとうございました。
*「miramos」の詳細は↓の画像から
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