介護報酬を議論する厚生労働省の審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)で24日、来年4月に迫る次の改定に向けた協議が始まった。【Joint編集部】
現場の関係者らで構成する委員からは、人手不足の深刻さを訴える声が続出。人材確保につなげる追加的な処遇改善を求める意見が相次いだ。
また、「異次元の少子化対策」などの財源を調達するために介護報酬をできるだけ抑制する、という議論の流れを牽制する声もあがった。
◆「崩壊を危惧している」
「物価高騰の波が襲いかかり、介護施設・事業所の経営は大変危機的な状況。他業界の賃上げで介護人材が多数流出しており、その傾向は更に加速していく恐れがある」
日本医師会の江澤和彦常任理事はこう問題を提起。「サービス提供体制の崩壊を危惧している。介護報酬の大半は人件費に使われており、その介護報酬を抑制する状況には全くない。制度の安定性・持続可能性を確保するために財源の確保が不可欠」と訴えた。
大阪府豊中市の長内繁樹市長(全国市長会)は、「特に人への投資が求められる。介護職全体の賃金水準の底上げを是非とも行って頂きたいということを、全国市長会を代表して申し上げたい」と発言。「最近ではケアマネジャーの人材確保も難しい。この点も踏まえて議論を進めて欲しい」と述べた。
また、日本介護支援専門員協会の濱田和則副会長は、「介護支援専門員の人材確保も更に困難となってきている。例えば処遇改善加算の対象に居宅介護支援を含めるなど、何らかの賃上げ策の検討を」と促した。
このほか、連合の小林司生活福祉局長は、「今年の春闘の流れを介護現場にも行き渡らせるべく、更なる処遇改善を進めるべき」と要請。全国老人福祉施設協議会の古谷忠之参与は、「介護現場で働く全ての職員の処遇改善を必ず行う必要がある」と主張した。
一方で、健康保険組合連合会の伊藤悦郎常務理事は、「今後は介護保険料の大幅な引き上げが見込まれ、現役世代はこれ以上の負担増に耐えられない。これまでと同様にサービスの拡充を続けていく状況にはない」と指摘。日本経団連の井上隆専務理事は、「給付の適正化・重点化を徹底しなければいけない。処遇改善を実現するためにもメリハリ付けが必要」とクギを刺した。