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2023年3月17日

【結城康博】通所介護は飽和状態にある 当面は新規参入の規制を強化すべき

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《 淑徳大学総合福祉学部・結城康博教授 》

福祉医療機構(WAM)は今年1月、通所介護の経営状況が悪化傾向にあるとの調査レポートを公表した。【結城康博】

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昨年度、WAMが貸付を行っている事業所の赤字の割合が46.5%にのぼり、前年度から4.6ポイント上昇していたことが分かった


また、先月に公表された厚労省の「介護事業経営概況調査」でも、通所介護の苦境を読み取ることができる。昨年度の利益率は、全サービスの平均(3.0%)を大きく下回る1.0%。前年度から2.8ポイント低下したと報告されている。


前回の介護報酬改定がプラスだったにもかかわらず、厳しい結果となったのはなぜか?


コロナ禍、人件費の高騰など諸々の要因が考えられるだろう。加えて重要な要因として、一部の地域を除いて通所介護が「供給過剰」「飽和状態」にあり、利用者の奪い合いが生じている側面も否定できない。


もちろん、地方など通所介護の供給が不足している地域も一部に存在する。ただ都市部では、コロナ禍が生じる以前から「供給過剰」になっているとの声を多く聞く。

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◆ 供給が需要を生んでいる


今後、新型コロナが「5類」に変わって収束へ向かうことになれば、以前のような通所介護の利用者の奪い合いが顕著になるだろう。いわば「競争原理」の問題である「供給が需要を生む」といった現象が、再び通所介護の現場で目立つに違いない。


確かに、「競争原理」はサービスの質の向上を牽引し、利用者にとってメリットとなる側面もある。しかし、利用者を獲得するインセンティブが機能しすぎる結果、一部で「利潤追求」などの事態を招くデメリットがあることも否めない。


例えば一部の事業所が、娯楽要素を強めたプログラムで需要を掘り起こしていることは否定できない。これらは保険料や税金を財源とした介護保険制度では、たとえ法令上抵触しなくとも行き過ぎと評価せざるを得ない。

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◆「飽和状態」の是正を


そのため、少なくとも「団塊の世代」が全て80歳以上となる2030年頃までを想定し、通所介護の新規参入の規制強化を検討すべきではないか。今の「供給過剰」「飽和状態」を是正する施策が求められる。


例えば、2024年度の制度改正で創設する「通所+訪問」の新サービスのみ新規参入を認め、従来の通所介護には高いハードルを設けるのはどうだろうか。


そして、「団塊の世代」が80歳以上となって要介護者数が大幅に増えていくタイミングで、再び新規参入の規制を緩和すればいい。70歳代と80歳代の要介護認定率には差があり、当面は既存の通所介護の供給量で需要に応えられるだろう。

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◆ 訪問介護にもっとリソースを


今の在宅介護では、訪問介護(ヘルパー)の不足が全国で喫緊の課題である。優先して新規参入を促進させなければならないのは訪問介護であり、併せて介護人材をシフトさせていく必要もある。


本来、保険者である市町村が新規参入についてもっとコントロールすべきだが、現状では法令上の規制が緩く限界がある。


このため、行き過ぎた「競争原理」の負の側面を改めて考慮して、国主導で一定の規制強化を考えながら、「計画経済」の要素を介護保険制度で強めるべきである。そうしなければ介護人材の有効活用なども不可能ではないか。


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