昨年の介護事業者の倒産、過去最多143件 前年比8割増 優勝劣敗の荒波、より鮮明に
東京商工リサーチは11日、介護事業者の倒産の急増を伝えるレポートを新たに公表した。【Joint編集部】
昨年1年間で143件にのぼり、介護保険制度が始まった2000年以降の過去最多を更新。前年から約8割も増え、これまで最も多かった2020年からも約2割増えた。
要因は複合的でケースごとに異なるが、新型コロナウイルスの感染拡大のインパクトがやはり大きいようだ。これが直接的、または間接的に影響した“コロナ倒産”は、前年の11件から63件へ大幅に増えている。
感染対策に伴うコストの増大、高齢者のサービスの利用控え、家族の在宅勤務の定着による需要減などに苦しむ事業者が多い。ここにきて国の支援策の効果が薄らいだことで、倒産に至るところが一気に増えたとみられる。
昨今の物価高騰も重くのしかかった。価格転嫁ができないという制約のなか、コストの大幅増による“息切れ倒産”も出始めている。人手不足や競争の激化といった既存の要因にこれらが加わり、倒産件数を押し上げた格好だ。
一方、高齢化の進展で介護ニーズは拡大を続けており、介護施設・事業所の数も一部のサービスを除いて増え続けている。倒産急増のレポートがあぶり出すのは、事業者の優勝劣敗が以前より鮮明になった業界の厳しい現実だ。東京商工リサーチは今回のデータを踏まえ、次のように分析している。
「介護報酬の加算が取れない事業者の淘汰が加速すると予想される。デジタル化によるコスト削減や人材獲得などができる大手と、それが難しい小規模事業者の格差が拡大し、2023年は倒産の増勢がさらに強まりそうだ」
昨年の倒産をサービスごとにみると、デイサービスなどの「通所・短期入所」が69件で最多。以下、「訪問介護」が50件、「有料老人ホーム」が12件、「その他」が12件となっている。職員が10人未満の小規模な事業者が、全体の8割超と大多数を占めていた。