夏の参院選の公示(22日)が近づいてきた。このタイミングで思うことを言わせて頂きたい。【結城康博】
介護職員やケアマネジャーなどの介護職間で、「政府の処遇改善策は不充分で問題だ!」とグチる光景をみかける。確かに、私もそう感じている。
しかし同時に、一部、介護職の「政治オンチ」とも言うべき姿勢が、そうさせてしまっている側面も否定できないと考える。福祉系専門職の中には、「利用者目線で日々の業務に専念していれば、いつか社会が評価してくれるはず。政治に関心を抱くと『計算高く』良心に反する」「夜勤明けだから投票に行くのは面倒だ」といった声も珍しくない。
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ただ、私からすれば、このような一部の専門職らは、お気楽な人達、他人任せな人達、寝ぼけた人達、と言わずにはいられない。
そもそも介護保険や福祉制度は公費や保険料で賄われており、自分らの給与や処遇も最終的には「政治」の場で決着する(国会や地方議会)。
確かに、厚労省をはじめとした行政機関で決定される場面もあるが、介護報酬などの予算関連は「政治」の場が主戦場だ。昨今、私は介護報酬改定など重要な議論における厚労省の影響力はかなり低下していると考え、いくらそこに陳情・嘆願しても限界があると分析している。
他方、昨年11月31日に投票が行われた衆院選の最終投票率は55.93%で、戦後3番目に低かった。約半数の有権者が投票所へ行かないのだ。
職種別の投票率は見当たらないが、おそらく介護職の投票率はさらに低いと予測する。本来、これだけ介護人材不足問題が深刻化しているのであれば、当事者である介護職の投票率は70%を超えてもいいだろう。
2019年時で介護職員だけでも全国に約211万人いる。あり得ないことだが、仮に参議院比例代表の特定政党として届け出され、全て投票したら2人は確実に当選させられるだけの専門職集団なのだ(1人100万票)。
そもそも医療系国会議員は与野党問わず数人の名前がすぐにあがり、診療報酬改定時には大きな声を上げている。
しかし、介護系の与野党国会議員数はかなり少ない。医療や介護は政局になりにくいテーマであり、与野党問わず本気で取り組んでくれる議員を増やすことで、政治の場での影響力の拡大につながる。
まず介護職は「白票」でもいいので、国政もしくは地方選挙を問わず投票所へ行くべきだ。繰り返すが、「低賃金で介護業界は困っている!」などとグチるだけの人達は、毎回の選挙において投票所へ出かけているのだろうかと問いたくなる。
「真面目に仕事さえしていれば」という「お人好し」思考では、「処遇」は一向に良くならない。介護保険が始まって20年、そのことはもう十分に分かったのではないだろうか。今、政治に「鈍感」の介護業界が「敏感」な集団となることが重要である。