介護現場において、現在、深刻な課題となりつつあるのは物価高騰です。【斉藤正行】
言うまでもなく、ウクライナ情勢に端を発した物価高騰はあらゆる産業に影響を与えており、生活場面にもその影響は派生しています。
介護現場においても、長引くコロナ禍の影響により、感染対策を講じるための経費負担の増大が続く中で、今度は物価高騰による水道光熱費、ガソリン代、食材費などの経費負担が、じわじわと事業者の収益環境を圧迫しはじめています。
もちろん、政府も無策でいるわけではなく、4月26日には「原油価格・物価高騰等に関する関係閣僚会議」を開催し、補正予算を組み「総合緊急対策」を策定しました。また、6月21日には「物価・賃金・生活総合対策本部」を設置し、初会合を開き、今後の追加対策を検討していくこととなりました。
私が代表を務める一般社団法人「全国介護事業者連盟」においても、全国老人保健施設連盟、介護人材政策研究会、全国介護事業者協議会の4団体連名で、4月28日に「物価高騰に対する介護・障害福祉現場への支援について」と題した要望書を、大家敏志財務副大臣に提出させて頂きました。
しかしながら、現時点においての政府からの回答は、「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金において物価高騰に対する経費負担の対応もできるように自治体へと通達している」とのことであります。
ただ、あくまでこの交付金はコロナ対策におけるかかり増し経費などに対する補助金であり、自治体へ裁量権が委ねられていることからも、実態として現場で活用していくことは非常に困難な状況があります。
また、政府との交渉の過程では、「物価高騰はあらゆる産業に影響が生じている課題であり、介護現場のみに優先して対策を講じることは難しい側面もある」との言葉も聞かれており、現在まだ有効な具体的支援策を引き出すには至っておりません。
しかしながら、私はこの言葉には全く納得をしておりません。
確かにあらゆる産業において物価高の影響が生じていることは間違いありませんが、例えば、小売店や飲食店などの業界においては、物価高騰による仕入れコストの増大が生じていることから、商品の値上げを実施し、利益確保を図る対策を講じています。
他方で、介護現場では、収入は介護報酬を基本としており、公的価格によって定められていることから、保険外収入など一部対応の余地も残されてはいますが、基本的には値上げ対策を講じることはできません。我々は現在、ただただ、経費が増大し、利益が圧迫し続けている状況下にあります。
このような介護現場ならではの現状をしっかりと政府に伝え、政府にはいち早く対策本部において支援策の検討を進めてもらいたいと思います。そのために、介護関係者みんなで大きな声を上げていく必要があるのではないでしょうか。