根強い反対意見があることも考慮し、丁寧に検討を進めていく構えだ。
厚生労働省は28日、2024年度に控える次の介護保険制度改正をめぐる協議を進めている審議会で、利用者負担の引き上げを俎上に載せた。2割負担の対象者を拡大することの是非について、中立的な立場をとりながら「検討してはどうか」と促した。【Joint編集部】
高齢化で給付費が更に膨張していく一方で、制度を支える現役世代は急激に減少していく今後を見据え、制度の持続可能性を高めたいという考えがある。
有識者で構成する委員の主張は分かれた。「支払い能力のある人には負担してもらうべき」との声があがった一方で、「サービスの“利用控え”につながる」「かえって重度化を招く」といった批判も噴出した。議論は平行線をたどっており、最終的には政府・与党の政治決着に委ねられる見通し。大枠の方針は年内に決まる。
介護の利用者負担は現在、所得に応じて1割から3割と定められている。2割負担は年収280万円以上(単身の場合)など、一定の所得がある高齢者が対象。3割負担はそのうち、年収340万円以上(単身の場合)など現役並みに所得がある高齢者のみに適用される。
今年7月時点で、利用者全体のうち2割負担の対象者は4.6%、3割負担の対象者は3.6%。それ以外の90%超は1割負担となっている。
今回の制度改正で検討されているのは、2割負担の対象者を拡大することの是非。現行の年収280万円以上(単身の場合)という基準を引き下げるか否か、が大きな焦点となっている。
厚労省は今後、水面下での詰めの調整で落としどころを探っていく。賛成・反対の両論があるのは政府内も同じで、関係者は「まだ方向性が定まっていない」と話した。
与党内では、「物価高騰のなか負担増は難しい」との慎重論も少なくない。また、内閣支持率の更なる低下を招きかねない施策は避けるべき、といった指摘も多い。このため、2割負担の対象者の拡大は小幅に留まるという観測も出ている。