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2025年4月11日

【結城康博】進む介護危機 公務員ヘルパーの再興しかない! 崩壊を止める本気の一手を

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《 淑徳大学総合福祉学部 結城康博教授 》

物足りなさを感じざるを得ない。一言で言えば踏み込み不足。危機感が足りないのではないか。【結城康博】

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4月10日、厚生労働省が極めて重要な報告書を公表した。テーマは2040年の介護サービス提供体制のあり方。日本の介護をどうするのか、国の舵取りの方向性を多角的にまとめたものだが、その内容には欠けている視点がある。


特に見過ごせないのが、人手不足が既に危機的な中山間・人口減少地域の方策の不十分さだ。私は「公務員ヘルパー」の再興が不可欠と考えるが、そうした記載がない。核心に触れるべきではないか。


似たような趣旨で、「市町村自らが直接的な事業としてサービスを実施する枠組みも1つの検討の方向性」という文言はあるが、これは評価に値しない。重要なのは介護職を正規職員として確保することで、玉虫色の表現でお茶を濁すのはやめてほしい。もっと覚悟を見せてほしかった。


◆メリットが多い公務員ヘルパー


中山間・人口減少地域の状況をみると、介護保険をベースとした既存のサービスの仕組みでは限界があると言わざるを得ない。とりわけ、訪問介護の経営を成り立たせるのは難しい。安定した立場で高齢者を支える公務員ヘルパーを確保し、自治体が責任を持ってサービスを提供するのが有力な手立てだ。


ここでいう公務員ヘルパーとは、終身雇用の正規職員として業務にあたる人材を指す。実際、介護保険制度が導入される前は、多くの自治体で公務員ヘルパーが活躍していた。


公務員ヘルパーの導入は、介護職のイメージアップにもつながる。低賃金のイメージが根強い介護職だが、正規の公務員であれば安心感や魅力が違う。求められる条件を提示することで、若者が職業選択の中で介護に興味を持つきっかけになる。


メリットは他にもある。中山間・人口減少地域では、若者の定住が大きな課題となっている。もし、若い人材が公務員ヘルパーとして地域に根ざして働けるようになれば、地方創生という観点からも大きな意味を持つ。単に介護人材の確保にとどまらず、地域コミュニティの維持・再生にも寄与するのではないか。

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カスタマーハラスメントや困難事例への対応といった観点でも、公務員ヘルパーは有効だと考える。民間が対応できなくても、安定的な立場にある自治体の職員であれば、指導的な役割を担いながら継続的にケアにあたれる。これは、中山間・人口減少地域に限らず都市部でも重要な視点だろう。


◆ 思い切った手を


この国の今後を考えると、介護サービス提供体制の持続性の確保は極めて重要なテーマだ。そろそろ抜本的な施策を講じなければ、「制度あってサービスなし」という日が近く訪れるだろう。


ここで公務員ヘルパーの再興を真剣に議論すべきだ。地域の厳しい現実を直視し、政府には勇気を出して思い切った手を打ってほしい。


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