介護支援専門員の法定研修の改定に関するパブリックコメントが、11月5日に完了しました。新しいカリキュラムにはヤングケアラーのことが含まれています。筆者は、ヤングケアラーに関する施策の委員会の委員を務めさせて頂いています。そこで今回は、ヤングケアラーについて考えてみたいと思います。【石山麗子】
政府は「骨太の方針2022」で、ヤングケアラーについて、包摂社会の実現を目指す少子化対策・こども政策の一環として、対策の強化に乗り出す姿勢を明確に示しました。現在、児童福祉法の改正、多機関・多職種連携による支援マニュアルの策定、ヤングケアラーアセスメントの改定など、様々な取り組みが進められています。
我が国では、ヤングケアラーの支援はこれまでほとんど手つかずでした。今まさに、様々な角度からネット(網)を張って支援しようとする取り組みが始まったばかりです。
国の調査結果をみると、小学生のヤングケアラーの約7割が「誰かに相談するほどの悩みではない」と回答しています。また「相談しても状況が変わるとは思えない」との回答は、年齢が上がるにつれて増加します。もしかすると、「大人に相談したところで何も変わらない」という、一種の諦めすら抱いているのかもしれません。
ケアマネジャーは、相談援助の専門職として利用者の居宅を少なくとも月に1回以上訪問します。家庭の様子を直接みることができますので、ヤングケアラーの発見機能を担うことが期待されています。
ところが意外にも、ケアマネジャーがヤングケアラーの存在を見落としている場合があります。家族構成図には書かれているのに、配慮が必要な対象として認識されていないのです。
人は視界に入っていても知識がなければ、それと気付かないことがあります。できれば法定研修を待たず、できるだけ早くヤングケアラーの知識を学ぶ機会が必要です。
ヤングケアラーの法令上の定義はありませんが、18歳未満で、一般には大人が担うような介護、家事、労働などを行っている方とされています。
子どもがこのような役割を担うヤングケアラーであること自体が良くない、と言っているのではありません。ラベルは貼ってはなりません。教育、部活、遊びなど、子ども時代に保障されるべき機会と経験を持てない状況下でも、「大人に相談できる」という最低限の期待と安心感を持てないまま、大切な子ども時代を過ごさなければならない。そんな環境をいまだに変えられないことが課題です。
ケアラーは介護を必要とする方と対になって存在します。ですからケアマネジャーは、“身近な大人”になれる可能性があります。最初からヤングケアラー支援を専門的に行おうと身構える必要はありません。ケアラーとしての役割を担っている子どもの存在に気付き、身近な大人として自然に声をかけ、子どもから声をかけられる存在になること。それがヤングケアラー支援の一歩です。