介護職員の給与、全産業平均との格差が更に拡大 昨年は月8.3万円 賃上げ求める声相次ぐ


厚生労働省は24日に介護報酬を議論する審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)を開き、介護職員の給与水準の動向を明らかにする調査の最新の結果を報告した。これを受けた委員からは、更なる賃上げを実現する追加的な施策の必要性を訴える声が相次いだ。【Joint編集部】
厚労省が今月18日に公表した調査結果によると、処遇改善加算を取っている事業所で常勤・月給で働く介護職員の給与(*)は、昨年9月で平均33万8200円。今年度改定での加算拡充の効果もあり、前年比で1万3960円(4.3%)上昇していた。
*ここでいう給与は月々の基本給、各種手当、ボーナスなどをすべて合計したもの。ボーナスや一時金が出ている事業所では、4月から9月に支給された総額の6分の1が上乗せされている。税金や保険料が引かれる前の額面で、いわゆる手取りではない。
ただ、事態はむしろ悪化していると言っても過言ではない。厚労省が提示した「賃金構造基本統計調査」のデータによると、昨年の全産業平均と介護職員の給与の格差は月8.3万円。他産業で賃上げが進展したことにより、前年の月6.9万円から大幅に拡大していた。
今回、厚労省は審議会にこうした足元の状況を報告した。
◆「本当に崖っぷち」
「他産業と比べて遜色のない給与水準となるよう、継続的な処遇改善措置を講じてほしい」
全国市長会を代表する立場で審議会に出席した大阪府豊中市の長内繁樹市長はこう注文。「介護報酬は2027年度の改定を待たずに、必要な見直しを柔軟に行うべき」と提言した。
全国老人福祉施設協議会の小泉立志副会長は、「昨今のインフレの影響で介護職員の給与は実質的に目減りしており、人材不足が一段と深刻化する要因になっている」と問題を提起。「このままでは今年の春闘で更に給与格差が広がってしまう。事業者単独での対応には限界があり、将来の展望も見出しにくい」と危機感をあらわにし、具体策の検討を促した。
このほか、日本医師会の江澤和彦常任理事は、「介護職員の他産業への流出もみられ、本当に崖っぷちの状況。他産業との差がこれ以上広がれば壊滅的な事態になる」と強調。日本介護支援専門員協会の濵田和則副会長は、「介護支援専門員の処遇改善が必要不可欠。このままだと人材確保は更に困難になる」と訴えた。