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2025年3月12日

【奈良夕貴】外国人介護人材の受入と定着、広がる自治体の挑戦 一定規模で安心・安定の仕組みを

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《 NTTデータ経営研究所・奈良夕貴氏 》

昨年末、1つのニュースが業界に衝撃を与えました。前年比の介護職員の人数が、介護保険制度創設以来初めて減少に転じたのです。こうした厳しい状況のなか、今後は外国人介護人材の受け入れも一段と重要性が高まっていくでしょう。【奈良夕貴】

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外国人介護人材の受け入れ数は年々増加しているものの、他国との競争は激化し、日本国内でも業界横断的に人材の取り合いが生じています。このため、質と量を確保することが難しい状況にあります。


これまで、外国人介護人材の受け入れは、主に個々の法人が監理団体や登録支援機関を通じて独自に取り組むケースが大半でした。しかし、受け入れた人材の定着支援や日本語学習のフォローが十分に行えず、離職につながるケースも少なくありません。


日本人職員も不足している中で、1法人のみで十分に対応していくのは限界があります。こうした課題を解決するため、自治体が人材の受け入れに主導的に関与するという取り組みが始まっています。


◆ 広がる自治体ごとの関与


現在、国外でも介護人材の争奪戦が激化していることから、送り出し国にとってもメリットのある仕組みを構築する必要があります。1法人単位での受け入れでは人数の確保が難しく、必要なフォローを行うにも限界があるため、送り出し国側のメリットも少なくなりがちです。


そこで、自治体が一定人数の受け入れから定着までに関与することで、送り出し国の行政機関や教育機関と連携しやすくなると考えられます。


例えば千葉県では、ベトナムから留学生を受け入れ、ベトナムの日本語学校から介護施設での就労までをつなぐ取り組みを実施しています。岩手県宮古市では、インドネシア・マナド市と意向表明書(LOI)を締結し、介護分野を皮切りに、他業種も含めて人材の受け入れを行う予定です。


自治体単位での関与は、人材の安定的な供給につながるだけでなく、受け入れ前後の研修などの統一もしやすくなるため、質の向上にも寄与すると考えられます。

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◆「育成就労」で状況も変わる


外国人介護人材が長く働けるようにするためには、生活面での支援も欠かせません。しかし、地方においては、都市部と比べて賃金や立地面で不利な場合があり、やはり1法人では対応が難しいこともあります。


例えば、同国籍の外国人を一定数受け入れることでコミュニティを形成すれば、母国語対応の相談窓口や文化交流の場が設けやすくなります。特定の国籍の方が増加したことで、運転免許の学科試験の対応言語を追加した自治体もあります。


また、自治体主導で外国人介護人材を支援する機関も設置されています。滋賀県の「国際介護・福祉人材センター」では、監理団体や登録支援機関の登録も行っており、研修や相談窓口を通じて受け入れ施設や外国人介護人材を支援しています。


こうした取り組みは、外国人介護人材が安心して働ける環境を整えるのに重要と言えます。


今後、「育成就労制度」が運用され始めると、外国人介護人材も現行より転籍がしやすくなるため、地方からの人材流出が増えると懸念する声があります。このため、ますます1法人ではなく、複数法人の連携や自治体による受け入れの仕組みを整えることが求められると考えられます。


一定規模で人材の確保・定着を一貫して行うことで、関係者にとって安心な環境づくり、安定した介護サービスの提供が可能となるのではないでしょうか。


こうした取り組みを推進するため、3月25日に「自治体・事業者向け!外国人介護人材定着セミナー」が開催されます。本セミナーでは、各自治体の事例報告や厚生労働省の最新政策動向など、実践的な情報が提供されます。


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