【小濱道博】介護現場への新たな補助金、確実に申請を 生産性向上を始める良い機会


昨年12月に国会で成立した補正予算を財源として、介護職員1人あたり最大で5万4千円相当の一時金を支給できる「介護人材確保・職場環境改善等補助金」が設けられた。【小濱道博】
この補助金の特徴は、事業所・施設に支給された資金を必ずしも職員の賃上げに充てる必要がない点にある。処遇改善加算とは異なり、職員の給与を直接増額する目的だけでなく、業務の効率化や職場環境の整備にも活用できる。
国の通知では、補助金の活用方法として「介護助手の雇用」に向けた募集費用があげられた。ただし、通常の介護職員などの募集費用に使うことはできない。また、職場環境の改善を目的とした取り組みも補助金の対象となるが、介護ロボットやICT機器そのものの購入費用は対象外となる。こうした使途のルールには留意が必要だ。
この補助金は一度限りの支給であり、事業者にとって継続的な財源とはならない。職員に一時金を支給することは可能だが、継続的な昇給を行おうとすれば翌年度以降は自腹となる。
新年度から、処遇改善加算の算定要件として定められている「職場環境等要件」も変更される。ただし、この補助金を申請した事業所・施設については、2025年度に限り「職場環境等要件」の適用が猶予される。
新たな「職場環境等要件」では、生産性向上の取り組みとして、国が定めるガイドラインに基づき、委員会やプロジェクトチームの立ち上げ、現場の課題の見える化などが求められる。介護助手などの補助的役割の活用も同様である。
こうした要件は、新たな補助金の受給要件と同一である。「職場環境等要件」の生産性向上の部分を満たすことで、補助金の受給要件も満たす扱いとなることがポイントだ。すなわち、事業所・施設は処遇改善加算を算定する場合、新たな取り組みを求められることがない。補助金を受給しないという選択肢はありえない。
◆ 本質は日常業務を見つめ直すこと
いずれにしても、業務の洗い出しや効率化、負担軽減の方策の立案など、生産性向上に向けた取り組みが求められることは変わらない。全ての介護事業者にとって、生産性向上はもはや避けて通れない緊急課題となっている。
ICT化というと高価な機器や複雑な技術を想像しがちだが、その本質は日常業務を改めて見つめ直し、無駄や非効率を解消することにある。生産性向上を実現するためには、ICTの導入だけでなく現場の業務プロセスを見直し、持続可能な仕組みを構築することが求められる。
国もその伴走支援体制を強化している。これらの制度や補助金は十分に活用すべきだ。今後さらに加速する労働人口の減少に備えて、生産性向上への取り組みをスタートするには良い機会となるだろう。