【伊藤亜記】介護事業所・施設のマネジメント力の高め方 ポイントは非常勤職員!


新年度を目前に控え、介護事業者の方から「正社員に十分なマネジメント業務を担ってもらうにはどうすればいいか?」といったご質問を受けました。これから事業所を増やす計画を持っておられ、「非常勤職員にもある程度仕事を任せ、正社員はマネジメント業務に注力させたい」とご要望でした。【伊藤亜記】
これは重要なご質問です。私は非常勤職員への対応が大切だと思います。それぞれに目標を設定して背中を押すこと、能力に応じて事業所運営の権限を与えることがポイントになるでしょう。
そもそも介護事業は正社員の数が少なく、多くの非常勤職員の力を借りて成り立たせるものです。
その中で正社員の本来の仕事は何でしょうか。メインの1つがマネジメントで、ゆくゆくは事業所運営の責任者としての役割を果たすことが求められます。
例えば、非常勤職員を教育したり、シフトを調整したり、事業所の改善策を検討したり、更なる販促活動を展開したり。そうしたマネジメント業務こそが、本来の正社員の仕事ではないでしょうか。
逆に言えば、正社員がマネジメントの仕事に時間を十分に割ける環境を整えることが、事業所の将来を左右すると言っても過言ではありません。
そのためにはまず、非常勤職員にどこまでを任せて、どこからは任せないのか、そのラインを明らかにすることが重要です。どうしても任せられないこと、公開すべきでない情報などを明確に定め、適切なマニュアルを策定して下さい。あわせてその範囲内で、個々の非常勤職員の能力に応じて、できるだけ業務の権限を与えることも検討して下さい。
次に、非常勤職員ひとりひとりに当面の目標を設定し、それを達成するためのステップを明確にします。例えば、次のように具体的な目標、内容を示すといいでしょう。
「◯◯さんには3ヵ月後に△△の責任者としての業務を任せます。そのためにサービス提供前の準備と給付の業務はできるようになって下さい」
「◯◯さんには半年後にフロア責任者としての業務を任せます。そのために介護サービス全般を学び、接客のプロを目指して下さい」
その人の適性や希望に合わせながら、それぞれに合った目標を個別に定めることで、非常勤職員のやる気を引き出すことも可能となります。これにより、事業所の運営は非常勤職員が中心的に担う、正社員は主にマネジメントを担う、という意識改革を実現することにもつながります。
こうした経緯を経ることで、結果として、正社員にばかり依存する事業所運営から脱却することができるでしょう。人は本来、信頼して仕事を任せれば任せるほどやる気を出すことが多いものです。信頼して任せられる非常勤職員の育成に注力し、事業所のマネジメント力を高めていきましょう。