【小濱道博】混乱必至… 介護経営DBが運用開始 判明した経営情報報告の課題
介護サービス事業者経営情報データベースシステム(介護経営DB)は、本年1月6日より運用が開始された。原則、全ての事業者が経営情報を報告しなければならない。【小濱道博】
2023年度決算分の提出期限は3月31日である。しかし、操作方法や入力項目が分かりにくい。介護事業者は経営情報の報告ルールを十分に理解しておく必要がある。
◆ 分かりにくい情報入力
初めてログインする際、多くの事業者は操作に戸惑うと思われる。
基本情報の入力では、会計処理方法や税込・税抜の処理方法などについて具体的な指示が画面上にないため、適切な入力方法が分かりにくい。消費税の経理処理を理解していないと、正しい項目の選択が難しくなる。
また、多くの会計ソフトが現時点で介護経営DBに対応していないため、データの手入力が必要で負担となる。
情報の入力は事業所ごとに行うことが基本とされているが、財務情報の入力画面では、どの事業所の情報を入力しているのか判別しにくい。事業所ごとの区別が明確でなく、入力必須項目と任意項目の区別も分かりづらいため、法人全体の決算データを誤って入力するケースが多い。
しかし、よく見ると各項目には番号が振られており、画面を切り替えて事業所ごとに財務データを入力する必要がある。そして、この段階では事業所名が表示されないため、番号で入力した事業所を把握しておく必要がある。
入力後は、「届出対象事業所データ表示・編集」画面で事業所番号と事業所名を照合し、ここで初めて財務情報を紐付けるが、この仕様はマニュアルを読んでも理解しにくい。
◆ 混乱する現場も
職種別人数の入力画面では、入力した事業所ごとに人数を入力する。このパートの最大の問題は、事業所に毎月作成が義務付けられている勤務実績表の職種別人数の入力ではないことだ。職員の資格別の人数を入力することが求められる。
そのため、改めての集計作業が必要となる。常勤・非常勤の別や兼務職員のカウント方法など、勤務実績表の作成ルールとは大きく異なるため、現場の混乱に拍車をかけている。
さらに、ケアマネジャーやサービス提供責任者を「その他」の区分にまとめた後、改めて、再掲として個別に入力する必要がある。このルールを把握していないとスムーズな入力は難しい。なぜ、このような仕様にしたのか疑問である。
報告の単位は、基本的に事業所・施設ごとの会計区分に沿って行うが、提出が難しい場合は法人内の介護サービス種類ごとにまとめて報告することも可能である。会計区分に沿った経理が行われていない場合、法人一括での提出も認められ、その場合は職種別人数も法人単位で報告することになる。
これらの仕様やルールは、実際に入力を進める中で初めて理解できることが多いため、注意が必要である。
◆ 事前準備をしっかりと
介護経営DBの利用に際しては、法人の会計ソフトからCSVデータを出力して提出する方法が推奨されている。ただし、この方法を利用するには会計ソフトによる自計化が必要であり、対応できるのは財務情報と基本情報に限られる。職種別人数の報告は手入力が必要で、事業所数が多い法人では作業負担が大きい。
報告時点は会計年度の初月の給与支給時点の職員数であり、3月決算法人の場合、前年4月の職員数を集計する必要がある。過去に遡る集計作業は手間がかかるため、負担を感じる事業者も多い。
初回提出の3月末までの時間が限られているため、法人単位での報告も1つの選択肢となる。過年度分と進行年度である2023年度・2024年度分については、会計区分で処理している場合でも、法人一括での提出が選択肢の1つであろう。
会計ソフトの対応が遅れている現状もあり、これがシステムの理解や事務負担の軽減を考慮した現実的な対応である。そのうえで、2025年度以降の報告方法については、会計ソフトの対応状況や会計事務所との調整を踏まえて検討することが望ましい。
これから3月にかけて、介護経営DBへの入力を行う介護事業者が大部分であろう。関連する通知などを事前に熟読したうえで、入力作業に入ることを強くお勧めする。