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2025年1月6日

【小濱道博】問われる脱皮と成長 巳年で加速する介護業界の再編と事業者の二極化

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《 小濱介護経営事務所|小濱道博代表 》

東京商工リサーチによると、訪問介護の倒産件数が2024年1月から10月までの間に72件に達した。廃業件数は更に多い。【小濱道博】

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この倒産・廃業の増加を、今年度の介護報酬改定における基本報酬引き下げの影響とみる意見も多い。しかし、別の視点でみると状況は異なる。


◆ まだ始まったばかり


厚生労働省の統計資料によると、訪問介護の請求事業所数は2019年の3万3176事業所から年々増え続け、2024年は過去最多の3万5468事業所となっている。倒産・廃業が増加しているのは事実だが、全体の事業所数は減ることなく伸び続けている。

ここから推論できることは、倒産・廃業の増加の要因だ。事業所間の競争が激化していることと、結果としてホームへルパーを確保できない事業所が淘汰されていることが大きい。


生き残りのためには、時給のアップなどでヘルパーの確保を進めなければならない。しかし、訪問介護事業所のうち、「介護職員等処遇改善加算」を算定していない事業所は7.1%。新加算区分Ⅲ、Ⅳ、Ⅴを算定する事業所は20.5%である。

この27.6%に該当する事業所は、へルパーの確保競争で既に負けている。未算定の事業所だけをみても、全体の3万5000を超える事業所のうちの7%強、すなわち約2500事業所におよぶ。へルパーの高齢化も進んでおり、今後は高齢スタッフの退職も確実に増えていく。


訪問介護事業所の倒産・廃業の増加は、まだ始まったばかりなのだ。


◆ デイに求められる多様性


デイサービスも例外ではない。


地域密着型と通常規模以上を合わせたデイサービスの事業所数は近年、4万3000強で横ばいで推移している。ただ毎年、地域密着型が微減している傾向にある。


この数字は、新たなニーズに対応した事業所が開業すると同じ数だけ、旧態依然とした事業所が廃業に追い込まれていることを示している。その原因のひとつは、レスパイト型からリハビリ型への転換の遅れである。


デイサービスの主流は、「お預かり」からリハビリに移った。フランチャイズにおいても、今やリハビリ型が主流である。


レスパイト中心のデイサービスは、利用者のニーズから外れ始めている。レスパイトとリハビリの「ハイブリッド型」や、障害福祉を併設する「共生型」のニーズが高まっている。デイサービスには更なる多様性が求められている。

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◆ 今まで以上に問われる資質


介護事業所は国営ではない。あくまで民営であり、自由経済社会の中で生存競争の真っ只中にいる。国は、介護保険制度は守るが、一介護事業所を守ることはない。全ては経営者の自己責任である。


今は、誰もが新たな成功要因を探している時代だ。同時に、コロナ融資の返済が始まることもあり、事業の再構築を余儀なくされる経営者もいる。


事業規模の大きい法人ほど小回りがきかない。そのため、事業の方向性を変えることが難しい。業務が多忙を極めることもあり、職員も変化を望まない傾向がある。


あるコンサルタントが言った言葉である。「経営者は、虎の背中に乗っているのと同じだ」。一瞬でも気を抜いたら、振り落とされて食い殺されてしまう。それが経営者である。まさしく、経営者の立場の的を突いている。


そのような中でも、新たな事業展開を進める攻めの経営者も多い。2025年は、さらに事業者間の二極化が進み、介護業界の再編成が加速するであろう。今まで以上に、経営者の資質が問われる時代となってくる。


いずれにしても、良い悪いの振り子幅が大きいほど明日に飛躍する可能性も大きくなる。今年は巳年。変化の時、脱皮の時である。


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