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2024年12月20日

【石山麗子】ケアマネの業務範囲、関係者を巻き込んで地域みんなで考えよう 厚労省の業務分類の大きな衝撃

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《 国際医療福祉大学大学院・石山麗子教授 》

4月から開催されてきた厚生労働省の「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」は、第6回(2024年12月2日)をもって終了しました。12日には確定した「中間整理」が厚生労働省のホームページに掲載されました。【石山麗子】

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この検討会の重要性がどれほどのものであるかは、今年5月にここで指摘した通りです。過去に類似の検討会が開催され、国としての報告書がとりまとめられたのは1度きりで、以降、それを基に重要な制度改正が行われてきました。


例えば、居宅介護支援事業所の指定権限を市町村へ委譲した見直しのように、今日のケアマネジメントの環境に大きな影響を与えています。つまり、今回の「中間整理」に書かれていることは、今後、実現されていくであろうことと言えます。


とはいえ、認識しておきたいことは、この検討会は名称が「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」となっていますが、実際はケアマネジメント全般ではなく、「居宅介護支援事業所の(主任)介護支援専門員」に関する議論が中心であったということです。


◆ 業務を4つに分類


トピックはいくつもありますが、とりわけ将来のケアマネジャーの業務を左右するのが、居宅介護支援事業所で現にケアマネジャーが実施している業務を厚生労働省が初めて分類したことです。


分類は4つで、

①法定業務
②保険外サービスとして対応し得る業務
③他機関につなぐべき業務
④対応困難な業務

とされました。下表の通りです。

ケアマネジャーの業務範囲を規定したことが、将来的にどのような影響をもたらすのかは、行政、医療機関を含め、私達がどのように運用していくかにかかっています。


居宅介護支援事業所のケアマネジャーがやむを得ず行わなければならない業務は、件数としても増加しています。ただ、ケアマネジャーの負担感の要因はそれだけではないでしょう。周囲の職種や関係機関が、法定外業務でも本来業務と認識して、ケアマネジャーに当然のように担うよう求める姿勢が、ケアマネジャーの負担につながっていると考えられます。


「なんでもケアマネジャーに相談してください」。そんな風に関係機関から言っていただけるのは、ひとりひとりのケアマネジャーが努力し、地域に根差す活動を積み重ねてきた素晴らしい成果です。


なぜなら、2000年の制度施行時には、ケアマネジャーと称しても門前払いを食らうような知名度の低さだったからです。今や地域になくてはならない存在となったケアマネジャーは、これからも利用者の生活全般の課題を面談によって把握していきます。


とはいえ、それを把握することと、行為として支援の実行責任を負うことは同義ではありません。実行責任までケアマネジャー1人で負わなければならない環境自体が地域課題です。少なくとも今後は、ケアマネジャーも地域課題を自分の中だけにとどめず、保険者やケアチームと共有することが重要となります。

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◆ 皆で考えることが大きな一歩


そんなことを言っても、すぐに代わりとなる社会資源が湧いて出てくるわけではないので、不毛だと思う人もいらっしゃるでしょう。


しかし、ケアマネジャーの法定(外)業務の範囲について、行政やチームが皆で一緒に考える責任を負うのだと理解していただくことが大切です。それこそが、今回の検討会で、ケアマネジャーの負担軽減に向けて業務範囲を分類したことの意義を、各地域で具体化していくための大きな一歩になるはずです。


既にある地域では、介護支援専門員が集まって業務外と思われる行為について話し合い、「こんなことを言ってはいけないかもしれないけど、実は…」と安心して打ち明けられる場を設けました。


ケアマネジャーの業務負担の要因は、法定業務外を行う時間や労力だけではないでしょう。人に言ってはいけないかもしれないと思いながら、見て見ぬふりもできずに行ってきた様々な行為を、それぞれが1人で背負う重さも含まれていたのではないでしょうか。


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