広がるか、ケアマネの保険外サービス 厚労省が書類作成や郵便受取、救急車同乗を「対応し得る」と整理
ケアマネジメントの課題と向き合う検討会を今年春から開催してきた厚生労働省は、これまでの議論をまとめた報告書(中間整理)を12日に公表した。【Joint編集部】
利用者・家族のニーズに応える努力の結果として大きく広がったケアマネジャーの業務を、大きく4つに分類。法定業務の範囲を超えているものを、下表のように「保険外サービスとして対応し得る」「他機関につなぐべき」などと初めて位置付けた。
ケアマネジャーに無報酬の仕事を押し付けたり、地域課題を丸投げしたりするのをやめ、業務負担の軽減や職場環境の改善、人材確保につなげる狙いがある。
今後、居宅介護支援事業所による保険外サービスへの関心が大きく高まりそうだ。国の財政が厳しく介護報酬の十分な引き上げも容易でないなか、新たな収入源を確保できると期待する関係者も少なくない。
◆ ガイドライン作成を求める声も
今回の報告書で「保険外サービスとして対応し得る」とされたのは、
◯ 郵便・宅配便の発送・受け取り
◯ 書類の作成、発送、代筆、代読
◯ 救急搬送時の同乗
などの業務。これらを担った経験のあるケアマネジャーは多いが、利用者・家族から別途料金を徴収している事業所はまだほとんどない。国が「対応し得る」との解釈を示したことで、保険外サービスとして運用していけないか模索する動きが広がるとみられる。
厚労省は報告書に、利用者・家族に必要なサービスを提供できる体制をどう作るかという協議を、市町村が主体となって地域ごとに進めるべきと記した。居宅介護支援事業所が保険外サービスを運用する環境も、地域ごとに異なることになりそうだ。こうした動きの中で、新たなローカルルールの問題が生じる可能性もある。
また保険外サービスには、自費を多く使える裕福な利用者・家族を事業者が優遇するクリームスキミングなどの懸念がつきまとう。これらを念頭に、検討会の委員からはガイドラインの作成を求める声も出ている。
報告書の取りまとめを図った今月2日の会合では、認知症の人と家族の会の花俣ふみ代常任理事が、「保険外サービスは新たな費用負担が必要。低所得の高齢者のことを考えると心配になる」と述べた。
国際医療福祉大学大学院の石山麗子教授は、「ケアマネジャーが利用者に居宅介護支援と保険外サービスの双方を提供する場合などは、公正・中立を誰がどう担保するのか。問題が生じないようにガイドラインなどの作成が必要ではないか」と指摘した。
厚労省の関係者は今後の対応について、「検討していく」と説明するにとどめている。