【片岡眞一郎】必須の生産性向上 介護事業所を後押しする製品・サービスが続々登場
10月に開催された今年の国際福祉機器展には、300社以上の開発企業が参画、およそ12万人が来場した。【片岡眞一郎】
見守り支援機器やインカム、記録システムなど現場で役立つ製品・サービスも次第に増えてきた印象だ。また最近では、業務効率化やケアの品質の向上など、生産性向上に関連したサービスが広がりつつある。
生産性向上に関しては、介護サービス事業所が取り組みを進めるうえで参考にできるよう、厚生労働省が「生産性向上ガイドライン」を作成・公表している。
しかしながら、法人の理念やオペレーションの違い、利用者の個別性・多様性ゆえに、事業所でどこからどのように進めていくべきか分からないケースも多い。また、人材不足などで生産性向上に取り組む余力がないところも少なくない。
こういった背景を受けて、生産性向上の取り組みをサポートする製品・サービスが少しずつ増えてきている印象だ。
◆ 注目されるタイムスタディの効率化
たとえば、株式会社タイミーが手掛けている「タイミー」。「働きたい時間」と「働いてほしい時間」をマッチングするスキマバイトサービスだ。かゆいところに手が届く仕組みがポイントの1つと言えるだろう。
生産性向上を進めていくためには、個々の現場の課題を把握することが極めて重要となる。そのためには、職員がどのような業務にどのくらいの時間をかけているのか、タイムスタディなどで把握しなければならない。
しかしながら、実際の業務時間をきちんと記録できている事業所は少ない。実態を正確に把握しようとすると、職員が一定日数をかけて業務実績を細かく書き出すなど、とても手間がかかってしまう。
こういった現状を踏まえ、タイミー社では、社員が現場に赴いて業務時間の計測を行っている。更に、計測した時間を分析し、有資格・経験者限定の業務から無資格・未経験者でも対応しやすい業務までを切り分け、業界外の人材も含めたマッチングにつなげるサービスを提供している。
採用難で困っている事業所はもとより、生産性向上に取り組みたいがノウハウや余裕がない事業所のニーズも汲み取ることにより、介護業界で急速にサービスを拡大している印象だ。
タイムスタディを手軽に実施するサービスは、今年度の介護報酬改定で「生産性向上推進体制加算」が創設された影響もあり、「ハカルト」や「FonLog」など様々な製品が上市されはじめている。タイムスタディの意義をきちんと職員に伝える、入力時のルールを細かく設定して周知する、などの留意点はあるものの、それらを踏まえれば業務分析を行ううえで役に立つだろう。
◆ 個々の課題に即した機器を提案
株式会社GiverLinkが手掛けている「介護のコミミ」も注目度が高い。これはICTツールや介護ロボットなどの情報とその口コミから、自法人・事業所の課題に最適な製品を比較・検討できる業務改善プラットフォームだ。
新たな機器を導入する場合、どの製品が自分たちの課題に即しているのか、事業所単体では判断が難しい。国際福祉機器展のように多くの企業の製品が展示されると、どれを選定すべきか迷われる事業所もあるだろう。また、導入した新たな機器がうまく活用されずに倉庫で眠ってしまう要因の1つには、自分たちの課題に対応する製品を選べなかったことがあげられる。
このサービスで特筆すべきは、コールセンターへの問い合わせができる点だ。配置されたコンサルタントが介護事業所の課題を深堀りすることで、複数社の適切なツールの資料を提案することが可能となる。
事業所の中には、テクノロジーを導入すること自体が主眼になってしまい、自分たちの課題が見えていないケースも見受けられる。「介護のコミミ」は、困りごとや課題などをコンサルタントが丁寧にヒアリングすることで、事業所の真のニーズをくみ取り、そのニーズに対応する製品を、これまでの経験を踏まえて体系化した独自システムを介して提案できる仕組みだ。製品を使った職員の生の声を口コミで聞けるという点もあり、掲載製品数が大きく伸びてきている。
生産性向上・業務改善を自分たちだけで進めていくことが難しい事業所も多い。各都道府県は来年度までに、「生産性向上総合相談センター」を設置する計画を立てている。すでに、東京都や大阪府、千葉県などでは設置された。こういったセンターに業務改善について相談することも、1つの有効な手段と言えるだろう。