「ヘルパーに正当な評価を」 人材危機の訪問介護、審議会で報酬増や賃上げを求める声相次ぐ
厚生労働省は12日、介護報酬を議論する審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)を開催し、人手不足が著しい訪問介護の支援策を俎上に載せた。【Joint編集部】
現場の関係者や有識者らで構成する委員からは、今年度の介護報酬改定で訪問介護の基本報酬が引き下げられた経緯も念頭に、より思い切った手を打つべきと訴える声が相次いだ。
厚労省は今回、今年度から拡充・一本化した新たな処遇改善加算の効果を最大化したいと重ねて説明。そもそも取得していない事業所を減らしたり、上位区分へ移れる事業所を増やしたりする取り組みを強化するとし、「個々の事業所の取得状況に応じて、きめ細かく丁寧に対応していきたい」と理解を求めた。
あわせて、8月末に財務省へ提出した来年度予算の概算要求の内容も紹介した。
都道府県ごとに設置している基金の使途のメニューに、特に小規模な事業所のホームヘルパーの確保、経営改善などに向けた施策を加えると説明。ヘルパーの魅力を伝える広報事業も新たに展開するとし、「訪問介護を担う人材の確保・定着を通じ、事業所の経営の安定化を図っていきたい。地域で必要なサービスが提供される環境の整備に努めていく」と強調した。
◆ より壊滅的になる前に…
「いい仕事だよ、やりがいがあるよと広報することも大切だが、やはり正当な評価、もっと言えば単価が一番大きいと思う」
NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」の石田路子副理事長(名古屋学芸大学客員教授)はこう指摘。「ヘルパーの仕事への評価は本当に正当なのか。もっと高くなければいけないのではないか」と問題を提起した。
連合の小林司生活福祉局長は、「処遇改善が最も重要。昨今の他産業の賃上げを踏まえ、危機感を持って取り組みの強化をお願いしたい」と要請。認知症の人と家族の会の鎌田松代代表理事は、「今以上の壊滅的な状況になる前に、訪問介護の賃金や賞与の増額支給、更なる事務負担の軽減などを緊急に検討して頂きたい」と注文した。
自治体の関係者からも同じ趣旨の意見が出た。
全国市長会の代表者は、「事業所の廃止が増えており非常に深刻な状況」と報告。全国知事会の代表者は、「日々の業務に見合う給与水準となるよう、十分な介護報酬を担保することも重要」と促した。
また、民間介護事業推進委員会の稲葉雅之代表委員は、厚労省が紹介した来年度予算の概算要求の施策に触れ、「実効性の高いものでなければ意味がない」と述べた。
日本医師会の江澤和彦常任理事は、新たな処遇改善加算について「まずは現場の職員に恩恵を届けることが先決」と言明。算定要件の緩和の検討を促した。