介護支援専門員の法定研修の改正について、広く国民の意見を募るパブリックコメントが行われています(10月7日〜11月5日)。改正のポイントの1つが「適切なケアマネジメント手法」の導入。今後「適切なケアマネジメント手法」は、個々のケアマネジャーが抑えておくべき非常に重要なものとなっていくでしょう。【石山麗子】
9月〜10月には、全国から応募したケアマネジャー約1000人を対象に、適切なケアマネジメント手法の実践研修も順次スタートしました(介護保険最新情報Vol.1088)。筆者は、この研修の講師を仰せつかっています。全国のケアマネジャーの実働数は約19万人ですから、受講割合は約0.5%。今後、できるだけ多くのケアマネジャーに学んで頂きたいと思っています。
適切なケアマネジメント手法の実践研修とは、いったいどのようなものなのでしょうか。
ケアマネジャーの研修の多くは講義、演習形式ですが、適切なケアマネジメント手法では「実践研修」のスタイルを取り入れました。その名の通り実践を伴う研修で、約3ヵ月間にわたり講義・実践・演習を織り交ぜて行います(図1)。
この方法は、筆者が厚生労働省を退官した後、東京ケアマネジャー実践塾や品川区などからご依頼頂いた、適切なケアマネジメント手法をテーマとした研修でも採用した方法です。「どうやら効果がありそうだ」ということが分かってきていましたので、全国研修の方法を検討するなかで取り入れられたという経緯があります。極めて忙しいなかで果敢に実践研修に取り組んできた先人ケアマネジャーの皆さまの地道な努力のうえに、この研修形式があることに感謝したいと思います。
適切なケアマネジメント手法は、ケアマネジャーが制度施行以来積み重ねてきた実践知を集約し、体系化したケアマネジャーの財産です。それだけに、経験年数の長いケアマネジャーにとっては、当たり前のことが列挙されているように見えるかもしれません。しかし、ひとたび実践すれば、深淵をのぞき込むような取り組みであることに気づくでしょう。
実践研修では、利用者を1人選びます。それから適切なケアマネジメント手法の基本ケア(44項目)に沿って、自分の実践を振り返ります。いわゆる「抜け漏れチェック」です。ある経験年数の長いケアマネジャーは、「抜け漏れチェックとは、失礼なことをさせるものだと思ったが、意外にも自分の取り組みにポコポコ穴がある現実を突きつけられた」と話していました。
別な受講者からは、「見えてきた課題に対してアプローチするには、利用者の成育歴まで知らなければ対応できないと痛感した」という声も聞かれました。まさに、それこそが適切なケアマネジメント手法なのです。適切なケアマネジメント手法を実践することは、これまで以上に利用者に丁寧に向き合うこと、利用者に利用者のことを真摯に教えて頂く営みです。利用者を知ればこそ利用者の尊厳を守り、その方を中心にした意思決定支援にも繋げることができるのです。
早い都道府県では、適切なケアマネジメント手法の講師やファシリテーター養成を意識した取り組みも始まっています。特に地域のリーダークラスの方は、これから1年ほどの間に適切なケアマネジメント手法の実践を経験しておくとよいでしょう。