“要介護1と2の保険外し”に介護事業者らも強く反発 「積み上げを破壊し踏みにじる改革」 厚労省へ要望書
要介護1と2の高齢者への訪問介護、通所介護を市町村の総合事業へ移す構想に対し、介護現場の関係者が抵抗の動きを強めている。【Joint編集部】
介護サービスの事業者や専門職らで組織する8団体(*)が21日、厚生労働省へ要望書を提出。強く反対する立場を明確に示し、「過去の積み上げを破壊し、先人たちの努力を踏みにじる改革」と指弾した。
* 要望書を出したのは、全国老人福祉施設協議会、全国老人保健施設協会、日本認知症グループホーム協会、日本介護支援専門員協会、日本介護福祉士会、日本ホームヘルパー協会、全国ホームヘルパー協議会、全国社会福祉法人経営者協議会の8団体。
介護費の抑制を図る財務省などが提案しているこの構想をめぐっては、利用者の立場を代弁する団体も強く反対を訴えている。「認知症の人と家族の会」が始めたオンライン署名運動には、22日13時の時点で4万2052人が賛同。今月1日に「#要介護1と2の保険外し」がTwitterで一時トレンド入りするなど、世論の関心も高まっている。
8団体は今回の要望書で、主に介護予防や社会参加などを目的として地域住民、ボランティアらもサービスの担い手となる総合事業の特徴に触れたうえで、そこに要介護1と2の高齢者も組み込むことの妥当性を疑問視。「適切な専門的サービスが提供できず、自立を阻害し重度化を招く」「要介護者本人の自立を阻害するだけでなく、そのしわ寄せが家族介護の負担増となり、介護離職など更なる問題につながりかねない。地域包括ケアシステムの推進と正反対の結果を招く」などと問題点を強調した。
あわせて、総合事業のサービスへの対価、事業者への報酬が安く抑えられている点にも言及した。「介護職の継続的な処遇改善を困難にするばかりか、事業者は採算が取れず経営不振で撤退することもあり得る。その結果、要介護者の在宅生活を支えるサービスの担い手が地域にいなくなる」と指摘。続けて以下のように厳しく非難した。
「日本の高齢者介護分野は、医療、介護、行政、住民が力を合わせて、超高齢化を乗りきるために世界有数のサービス提供体制を整えてきた。このような見直しは、過去の積み上げを破壊し、医療、介護に関わる先人たちの努力を踏みにじる制度改革だ」