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2024年8月20日

【足立圭司】介護現場で役立つロボットを作るには ニーズ・シーズマッチングの重要性

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《 NTTデータ経営研究所・足立圭司氏 》

介護人材不足に対する打ち手の1つとして、介護ロボットやICT機器などのテクノロジーが期待されています。国は、昨年度補正予算と今年度当初予算で補助金を拡充するなど、その導入・活用を促進しています。【足立圭司】

一方で、介護現場の介護ロボット導入率は決して高いとは言えません。国の「介護現場でのテクノロジー活用に関する調査研究事業」の報告書によると、介護ロボットの導入率は高いものでも30%、訪問系や通所系の事業所では全て分野で10%未満となっています。


また、介護ロボットを導入済みの介護現場からは、「導入したロボットが使いづらい・あまり役に立たない」「使用せず倉庫に入っている」という声も聞かれるなど、たとえ補助金などを活用してロボットを導入したとしても、十分に活用されていないケースが見られます。


これらの原因は様々考えられますが、そのうちの1つとして、介護ロボットの開発企業にとって、ロボットを使って解決したい困りごと、すなわち「ニーズ」の把握が難しいことがあげられます。その結果、開発されたロボットが介護現場のニーズに合わないものになってしまい、導入・活用されにくくなっている可能性があると考えられます。

この問題を解決し、介護現場にとって使いやすく、実際に課題解決へつながり得るロボット開発を促進するために、厚生労働省では、介護ロボットのニーズ・シーズマッチング支援事業を実施しています。


ニーズ・シーズマッチング支援事業では、開発企業が把握しづらい介護現場のニーズを収集し、「介護現場のニーズリスト」として公開しています。また、開発企業が各ニーズの詳細を知りたい場合には、介護現場や工学技術に精通した専門家「マッチングサポーター」とディスカッションすることもできます。


さらに、開発企業が試作品の効果や安全性を検証したい場合には、「リビングラボ」で介護施設の利用者や職員、ロボット開発支援の専門家らの助言を得ながら実証実験を行うことも可能です。


このニーズ・シーズマッチング支援事業は、今年度で4年目を迎え、これまでに支援を受けた企業数は延べ200を超えています。中には、ロボットを開発・改良するにあたって、介護施設にロボットを持ち込んで利用者や職員から率直な意見を頂いた事例もあります。開発企業の方からは、「これまで想定していなかった改善点に気付くことができた」という意見もありました。


今後、上記のように、ニーズ・シーズマッチング支援事業を活用した開発企業が、介護現場の課題解決に役立つ機器を開発し、介護現場の生産性向上が一層進むことを期待しています。


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