【田中紘太】ケアマネの業務範囲、難しいが明確化は必要 安心して働ける環境の整備を
厚生労働省は先月24日、ケアマネジメントをめぐる様々な課題と向き合う検討会の3回目の会合を開催しました。その中で論点の1つとして、ケアマネジャーの業務範囲のあり方が取り上げられました。【田中紘太】
論点は以下のように整理されています。
◯ 利用者・家族からの幅広い相談や依頼に、ケアマネジャーが対応せざるを得ない状況も見られる。高齢者が抱える課題が多様化・複雑化しているなか、ケアマネジャーを含む地域全体で要介護者らを支えていくことが重要。その中で、ケアマネジャーが地域で担うべき役割や業務はどんなものと考えられるか。
◯ ケアマネジャーの業務範囲の外と考えられる業務は、具体的にどんなものか。また、その業務はケアマネジャー全てに当てはまるものか。
◯ 業務範囲外とされた業務について、誰が、どのように対応し、その費用をどのように負担・分担することが適切と考えられるか。
※ 読みやすさの観点からJoint編集部が一部要約。
検討会では既に様々な意見が出ています。私は現場で実践しているケアマネジャーとして、身寄りがなく、金銭的にも困窮しており、かつ介護保険などの公的支援で対応できない部分について、対応できる人が誰もいないのであれば、ケアマネジャーを含むケアチームで対応することも仕方がないと感じております。
もちろん、ケアマネジャーの本来の業務範囲を皆様に理解して頂いたうえで、ご本人様ができること、ご家族様ができることはできるだけお願いしていくべきでしょう。公的支援も最大限に活用し、それでもなお支援が必要と考えられるケースについては、周囲と相談しながら対応にあたることが求められると思います。
ただ、本当はご本人様、ご家族様ができること、公的支援を活用できることであっても、ケアマネジャーが個々の判断で対応してしまっているケースも見受けられます。そうしたことのないように、それぞれが基本に立ち戻り、運営基準、解釈通知、契約書、重要事項説明書などの内容をよく確認し、ケアマネジャーの業務を改めて理解することが必要となるでしょう。
何でも安易にやってあげる − 。それだけでは質の高いケアマネジャーとは言えません。ケアマネジャーの専門性は、介護保険法にしっかりと記載されている通りです。
とはいえ、厚労省の検討会が取り扱っているのはやはり非常に難しい論点だと言えるでしょう。多くの視点を考慮する必要があり、ケアマネジャーの業務範囲を整理・明確化することは容易ではありません。
それでも、業務範囲をある程度明確に定めていかなければ、ご利用者様、ご家族様、関係事業者、保険者、それぞれの共通理解ができません。ケアマネジャーの業務範囲が徐々に膨大になってしまうため、相応の線引きはやはり必要ではないでしょうか。
先月の検討会の資料には、ケアマネジャーの業務範囲外と思われる支援の内容が列挙されていました。その中には例えば、
◯ 金融機関、その他各種機関の手続き、申請の代行・支援
◯ 入院・入所時の身元保証
◯ 生活費など日常的な預貯金の引き出し・振込代行
◯ 死後事務
◯ 土地や住宅、相続に関する手続きや申請の代行・支援
◯ 財産管理
なども含まれていました。必要性に応じて仕方なくという事情もあったと推察しますが、この中には本来やってはいけないことも含まれているように感じます。
例えば金銭や財産に関わることは、トラブルに巻き込まれるリスクも高いと言わざるを得ません。地域包括支援センターや社会福祉協議会の事業などで対応できる可能性もあるでしょう。
検討会にはこれら1つ1つを精査し、状況を少しでも良い方向へ向かわせることを期待しています。私としては、ご利用者様、ご家族様をきめ細かく支えていくという視点を踏まえつつ、ケアマネジャーが少しでも安心して業務にあたれる環境の整備が進むといいと思っています。