2024年6月29日

【壷内令子】ケアマネ試験、受験要件の緩和で門戸を広げよう 基礎資格や実務経験より大切なこと

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《 株式会社ウェルネス香川・壷内令子代表取締役 》

介護支援専門員実務研修受講試験の受験要件について、国が見直しに向けた検討を進めているようです。私もこれを考えたいと思います。【壷内令子】

私が実務研修受講試験を受けたのは2000年で、介護保険制度が始まった年の第3回試験でした。


この時の合格率は34.2%。当時を振り返ると、制度開始に合わせてケアマネジャーを迅速に育成する必要があったこともあり、今と比べると合格しやすい環境にあったと思います。第1回試験(1998年)の合格率は44.1%、第2回試験(1999年)の合格率は41.2%でした。


◆ 合格率の引き上げは安易すぎか?


このところ、実務研修受講試験は難易度がかなり高くなっています。2018年から2023年の合格率の平均は約18%にとどまります。


他の資格と比較すれば、これがいかに狭き門であるか分かるでしょう。難関と言われてきた社会福祉士でも、昨年度には合格率が58.1%と2年連続で過去最高を更新しています。


であれば、実務研修受講試験の合格率を上げることも検討してよいと思いますが、これは安易すぎますか? もう少しハードルを下げて、まずはケアマネジャーになる人を増やすという選択肢もあり得るのではないでしょうか。

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◆ 受験資格の厳格化は正しかったか?


2018年以降、ケアマネジャーの専門性や質を更に高めることなどを目的として、実務研修受講試験の受験要件の中から、

◯ 初任者研修を修了(旧2級ヘルパー)して5年以上の実務経験を持つ方


◯ 無資格で10年以上の実務経験を持つ方

らが除外されました。その結果、受験者数が激減してしまいました。


現在、主任ケアマネジャーとして活躍している方の中には、旧2級ヘルパーを基礎資格とする方もいらっしゃいます。地域のリーダーとして活躍しているケアマネジャーがもともと旧2級ヘルパーだったとして、それは専門性が低いのでしょうか? サービスの質が低下するのでしょうか?


基礎資格がどうであれ、ケアマネジャーになった後がより重要です。本人がやる気を持ち、自己研鑽を積み、スキルアップを目指すかどうか。結局はこれが非常に重要な要素になるわけですから、受験資格の厳格化は元に戻しても良いのではないでしょうか。

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◆ 実務経験5年って必要?


実務研修受講試験の受験要件には、「通算5年以上かつ900日以上」の実務経験が含まれています。この「5年」にはどんな根拠があるのでしょうか。全員に5年も必要なのか疑問です。


ただでさえ、介護福祉士などの基礎資格を取得するまでには時間がかかります。資格試験も年に1度しか実施されません。


確かに、基礎資格での実務経験はケアマネジメントを行ううえで重要でしょう。ただ、それにしても5年は長すぎます。3年あれば十分ではないでしょうか。基礎資格の実務経験を短くして次世代の人材を増やせば、先駆者世代が持っている知識や経験を伝えていく時間が長くなるメリットも生じます。


◆ 受験勉強するほどの魅力はなくなった


日々の仕事をしながら、家事や育児と両立させながらの受験勉強は非常に大変です。


以前は「試験合格までに3年かかった」なんて話もよく聞きました。みんな頑張っていたんです。何年もかけて受験勉強を重ねるのは、ケアマネジャーになりたいという強いモチベーションがあったからです。ケアマネジャーはそれほど、少なくともこの業界ではステイタスが高い職種でした。


しかし、それはもう過去の話。現在では、受験勉強なんて馬鹿らしいと思われてしまうほど不人気な資格になりました。その要因は、皆様が繰り返しご指摘されている通りだと思います。


ケアマネジャーには学校形式の教育課程がありません。試験合格を目指す講座などはありますが、時短で資格を取得できる大学や養成校などのルートも必要ではないでしょうか。他の資格と同じ様に、ケアマネジメントの専門性を数年に渡りしっかりと学習してから試験を受け、即戦力として活躍できる道があっても良いと考えます。


ケアマネジャーの専門性や質を保つために実施された制度改革が、今、人材不足に拍車をかけているようにも感じます。法定研修のあり方などにも課題はありますが、まず、ケアマネジャーの入り口をどうするか、未来に向けて検討する必要があると思います。


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