【黒澤加代子】目立つヘルパーの世代間ギャップ 訪問介護の現場を良くするために意識していること
訪問介護は20代から80代まで幅広い年齢層の職員が担っています。ある意味、かなり進んだ多世代交流が実現できている現場なんです。【黒澤加代子】
◆ 若者に戸惑う高齢ヘルパー
ひと昔前は、高齢のヘルパーさんに対して若いサービス提供責任者がどう接すればよいか分からない、という時代がありました。私もその1人でした。
しかし今では、平均年齢がおよそ55歳と高齢化が進行した結果、逆の現象を見る機会が増えました。例えば20代、30代と仕事をする機会が減り、高齢のヘルパーさんが“今どきの若者”とどう接するべきかと戸惑う事態が多く発生しています。
世代間ギャップの1つとして、「時間感覚の違い」を感じる場面はありませんか?
忙しく予定が詰まりがちな訪問介護の業務は、「時間感覚」が重要です。どうすれば質の高いケアを、1分1秒でも早く効率的に提供できるのか − 。私も常にそう考えて行動しています。毎日着実にスケジュールをこなしていくと、体内に時計が埋め込まれているかのように感じることもあります。
例えば訪問時間が10時であれば、できる限り10時ピッタリに到着することが昨今の主流ではないでしょうか。10年ほど前までは、いわゆる「5分前行動」で9時55分に着くことを良しとする暗黙のルールがありました。
ただ、これは昔の話に変わってきています。身体介護に続く生活援助の算定時間の細分化や「身体01」の導入など、数分を大事にする介護報酬の改定もきっかけになりました。
◆ 伝えることの難しさ
こうした「暗黙の了解」は、世代間コミュニケーションの落とし穴になりがちです。先日、そのことを実感した出来事がありました。
専門学校・大学の若い実習生とのやり取りです。10時の訪問に向けて事前に「9時45分に出ます」とお伝えし、いざその時間になったので「さぁ行きましょう」と声をかけたら、相手がそこから出かける準備を始めたのです。私たちの感覚では、9時45分には準備を済ませていつでも出れる状態にしておくこと、を当たり前にイメージしていました。
まさに時間間隔のギャップです。私はいつも偉そうに、「相手に伝えることと伝わることは別」と説いているにも関わらず、「自分が駄目じゃん」とハッとさせられました。初めからしっかり説明すればいいだけの話。教える側、伝える側の私が悪い…。
時間間隔のギャップの多くは、丁寧なコミュニケーションによって徐々に解消していけるのではないでしょうか。この実習生も、次の日から「10時に訪問したいので9時45分には出れるよう靴を履いて準備しておいて下さい」と伝えたところ、その通りに行動してくれました。
◆ 世代間ギャップを楽しもう
インターネットがある時代とない時代、黒電話とスマホの時代ではコミュニケーションの形が変わります。そこにメリット・デメリットが生じるのも自然の流れです。当然、世代間の感覚も大きく変わってくるでしょう。多世代交流が進む訪問介護の現場では、そのことをより強く意識する必要があるのかもしれません。
これまで通りの暗黙の了解は、誰も了解していないかもしれない勘違いの入り口です。1から10だけでなく20まで、詳細を明確に言葉で伝えて共有することが大事ではないでしょうか。利用者宅で1対1で展開される訪問介護だからこそ、丁寧な言語化が必要だと感じます。
世代間のギャップに焦点を当てて書きましたが、このことは直接会う機会が少ないヘルパーさんとの関係でも大切です。私は今回、実習生からコミュニケーションを改善するきっかけを得ることができました。
若者にもっと訪問介護の現場に来てもらいたい − 。本当にそう願うなら、きっと我々も変わらなければいけません。
経験や勘は重要ですが、相手からすればそれは理解しにくいでしょう。そのことを前提に、自分はこう考えている、思っていると伝えることが大事だと感じています。
時代の変化を踏まえ、世代感のギャップを楽しむくらいの柔軟さが求められています。それが先駆的な取り組みを生み、より良い現場を作るきっかけになるのではないでしょうか。