厚労省、外国人の訪問介護の解禁に5要件 事業者に求められるルールまとめ
介護現場で働く外国人をめぐる制度のあり方を検討してきた厚生労働省の有識者会議が19日、今後の見直しに向けた報告書をまとめた。【Joint編集部】
技能実習や特定技能などの枠組みで働く外国人であっても、事業者が要件を満たせば訪問系サービス(*)で働けるようにする方針を打ち出した。外国人の活躍の機会を広げつつ、全国的に大きな課題となっているホームヘルパーの確保につなげる狙いがある。
* 介護保険の訪問介護、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型サービスなどを指す。
技能実習や特定技能などの外国人は現行、利用者の住まいへ1人で入ってケアにあたる特有の難しさなどを考慮し、訪問系サービスへの従事が認められていない。この規制が撤廃されれば、集合住宅でサービスを提供する事業所や大手企業の事業所などを中心として、外国人の活用が広がる可能性がある。
事業者にはどんなことが求められるのか。厚労省が報告書に盛り込んだルールなどをまとめていく。
◆ 巡回訪問でルール遵守をチェック
外国人が訪問系サービスで働く前提は、日本人と同様に有資格者であること。初任者研修などの修了は必須とされた。
厚労省が今回、外国人を採用する事業者の要件としてあげたのは5つ。次の通りだ。
訪問系サービスの外国人活用の5要件
(1)外国人への研修について、訪問介護の基本事項、生活支援技術、利用者・家族・近隣とのコミュニケーション(傾聴、受容、共感などコミュニケーションスキルを含む)、日本の生活様式などを含むものとすること。
(2)訪問系サービスの提供を1人で適切に行えるよう、一定期間、サービス提供責任者が同行するなど必要なOJTを行う。その回数や期間については、利用者や外国人の個々状況により、事業者が適切に判断すること。
(3)業務内容や注意事項などを外国人に丁寧に説明し、その意向などを確認しつつ、外国人のキャリアパス構築に向けたキャリアアップ計画を作成すること。
(4)ハラスメント対策の観点から事業所内で、
◯ ハラスメントを未然に防ぐための対応マニュアルの作成・共有、管理者らの役割の明確化
◯ 発生したハラスメントに対処するルールの作成・共有
◯ 相談窓口の設置や相談しやすい職場環境づくり
◯ 利用者・家族らに対する周知
など必要な措置を講じること。
(5)外国人の負担を軽減したり、訪問先での不測の事態に適切に対応したりする観点から、介護ソフトやタブレット端末の活用による記録業務の支援、コミュニケーションアプリの導入、困りごとが相談できる体制の整備など、ICTの活用も含めた環境整備を行うこと。
厚労省はこうした要件を遵守させるため、必要な体制・計画などを明らかにする書類を事業者に提出してもらうと説明。巡回訪問による調査・聞き取りなどを通じて、不正がないか個別にチェックしていく意向を示した。
厚労省の担当者は会合で「不適切な事業者がいれば指導し、改善がみられなければ外国人の受け入れ、訪問系サービスへの従事を認めないなどの措置をとる」と述べた。
厚労省は今後、外国人の訪問系サービスの解禁に向けて告示の改正を目指す。他省庁の関係制度との兼ね合いも考慮し、日程は「具体化の検討を進め、準備が整い次第、順次施行する」とするにとどめた。早ければ来年度にも施行される見通しだ。