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2024年5月27日

【まとめ】ケアマネのテレワークで留意すべきこと 遠方でもOK? サテライトオフィスの扱いは?=田中紘太

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《 株式会社マロー・サウンズ・カンパニー|田中紘太代表 》

昨年度末の3月29日、厚生労働省から1本の通知が発出されました。タイトルは「介護サービス事業所・施設等における情報通信機器を活用した業務の実施に関する留意事項について」。


これだけでは何の話か分からないかもしれません。内容をよく読んでいくと、介護職のテレワークについて詳しく記載されていました。【田中紘太】

介護現場にテレワークを導入する動きの背景には、やはり人手不足の深刻化があると言えるでしょう。政府の「デジタル臨時行政調査会」が、より効率的な体制の整備や職場環境の改善などをできる範囲で進めるよう促していた経緯もあります。


厚生労働省は昨年末、今年度の介護報酬改定に向けた審議報告の中でテレワークに触れ、「職種や業務ごとに具体的な考え方を示す」との方針を打ち出していました。それが今回の通知です。ここでは、居宅介護支援に絞って内容を解説させて頂きます。


◆ 緊急時の対応などが不可欠


最初に事業所の管理者。今回の通知には次のように書かれています。

管理者のテレワークの考え方について


管理者は個人情報の適切な管理を前提に、事業所の管理上支障が生じない範囲内でテレワークを行うことが可能である。当該管理者が複数の事業所の管理者を兼務している場合も、それぞれの管理に支障が生じない範囲内でテレワークを行うことが可能である。


※ 読みやすさの観点からJoint編集部が一部要約。

ここで重要となるのが、「管理上支障が生じない範囲内」の解釈でしょう。今回の通知には、例えば次のように整理されています。

管理者の「管理上支障が生じない範囲内」の考え方について


◯ 管理者がテレワークを行って事業所を不在とする場合も、運営基準上定められた管理者の責務を、管理者自らが果たす上で支障が生じない体制を整えておくこと。


◯ 管理者がテレワークを行うことで、管理者本人や他の従業者に過度な業務負担が生じないよう留意すること。


◯ 勤務時間中、利用者・従業者と管理者の間で適切に連絡が取れる体制を確保すること。また、テレワークを行う管理者は、利用者、従業者、その他関係者と、テレワークを円滑に行えるような関係を日頃から築いておくこと。


◯ 事故発生時、利用者の状態の急変時、災害の発生時など、管理者がテレワークを行う場合の緊急時の対応について、あらかじめ対応の流れを定めておくとともに、必要に応じて管理者自身が速やかに出勤できるようにしておくこと。


※ 読みやすさの観点からJoint編集部が一部要約。

ポイントはいくつかありますが、まずは常に連絡がつく体制を整えておく必要があるということでしょう。管理者がテレワークをする場合も、例えば職員の管理、利用の申し込みに係る調整、業務の実施状況の把握、ケアマネジャーに運営基準を遵守させるために必要な指揮命令などを、適時適切に行えるようにしなければいけません。


また、緊急時・災害時などに速やかに出勤できるようにしておくことも重要です。これができない距離でのテレワークは難しい、認められないと考えられます。このことについては、居宅介護支援の運営基準の解釈通知にも次のように書かれています。

居宅介護支援の運営基準の解釈通知


事故や災害の発生などの緊急時に、管理者自身が速やかに事業所、または利用者の居宅に駆けつけることができない体制となっている場合は、管理者の業務に支障があると考えられる。


※ 読みやすさの観点からJoint編集部が一部要約。

では、実際のところ管理者は、どれくらいの距離までならテレワークを選択できるのでしょうか? 診療報酬上は一部に具体的な距離の規定があるようですが、介護報酬上ではそうした規定はありません。


したがって、これまでに紹介した通知の記載が根拠になると考えられます。かなり遠方にご利用者様宅があり、管理者が緊急時などに速やかに駆け付けられない場合などは、行政から「業務に支障がある」とみなされることになるでしょう。

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◆ 課されている距離の制限


一方、管理者ではないケアマネジャーのテレワークはどうでしょうか。今回の通知には以下のように可能だと書かれています。

介護支援専門員のテレワークの考え方


◯ 書類作成等の事務作業については、テレワークで実施しても利用者の処遇に支障がないと考えられる。


◯ 居宅サービス計画の作成等をテレワークで行うにあたっては、適切なアセスメントやモニタリングが行われた上で実施する必要があることに留意すること。


※ 読みやすさの観点からJoint編集部が一部要約。

現行のルールでも、事業所が指定を受けている市町村以外のご利用者様を担当することは可能です。ただし、全国どこのご利用者様でもテレワークで担当できるということではありません。管理者について記載があるように、緊急時などに駆け付けられる距離の範囲内に限定されると考えられます。


もし、遠方でテレワークをしているケアマネジャーに事故や怪我、病気などが発生し、不測の事態で通常通りの業務を続けることが難しくなった場合には、他のケアマネジャーや管理者が代わりに対応しなければいけません。このためやはり、管理者らが速やかに駆け付けられない距離にいるご利用者様の場合は、テレワークだけでは「業務に支障がある」と認識しておくべきでしょう。

◆ サテライトの設置、十分な協議を


テレワークの活用にあたり、居宅介護支援について気になることの1つとして、サテライトオフィスでの業務は認められるのか、という問題があるでしょう。国のガイドラインを確認すると、テレワークの実施場所をめぐって次のような記載がありました。

ガイドラインのテレワークの形態


◯ サテライトオフィス勤務


自宅の近くや通勤途中の場所などに設けられたサテライトオフィス(シェアオフィス、コワーキングスペースを含む)での勤務は、通勤時間を短縮しつつ、在宅勤務やモバイル勤務以上に作業環境の整った場所で就労可能な働き方である。


◯ モバイル勤務


労働者が自由に働く場所を選択できる、外勤における移動時間を利用できる等、働く場所を柔軟にすることで業務の効率化を図ることが可能な働き方である。


※ 読みやすさの観点からJoint編集部が一部要約。

介護報酬の規定では、訪問介護・訪問看護などの業態でサテライト事業所の指定が認められているものの、居宅介護支援ではそれが認められていません。ただ、国のガイドラインや通知では、テレワークが可能な職種の中にケアマネジャーも含まれています。


事業所としての指定は認めないが、サテライトオフィスやモバイル勤務での業務は認められる、ということになると、新たな事業所の出店を考える時に判断に迷うこともあるでしょう。改めて指定を受けるべきなのか、サテライトオフィスとして指定を受けずにオフィスを構えるべきなのか − 。


現行、これはやや曖昧な状況です。現時点の通知などの内容を踏まえると、個人情報の管理、効率的な業務、緊急時対応などの要素を十分に勘案したうえで、市町村と協議を行いながら妥当性を検討することが無難ではないでしょうか。


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