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2024年5月21日

【奈良夕貴】外国人介護人材の持つ大きなポテンシャル フェーズは「確保」から「活躍」へ

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《 NTTデータ経営研究所・奈良夕貴氏 》

◆ 外国人介護人材は年々増加


現在、介護現場には多くの外国人介護人材(「特定活動(EPA)」「技能実習」「介護」「特定技能」の4制度)が就労しています。【奈良夕貴】

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2022年12月末時点では約4万人の外国人介護人材が在留(注)しており、受け入れ開始から年々増加しています。

注)EPA、在留資格介護は「在留外国人統計(出入国在留管理庁)」、技能実習は「職種・作業別在留資格『技能実習』に係る在留者数(法務省)」、特定技能は「特定技能在留外国人数(出入国在留管理庁)」の12月末時点の数値より算出

また、外国籍の介護福祉士登録者は2023年8月末時点で1万8915人(4制度以外、帰国者も含む)おり、資格保有者も増えてきています。公式にその内訳は公開されていませんが、「外国人介護福祉士の活動実態に関する調査研究事業」によると、外国籍登録者の約半数は4制度に基づく方々と想定されています。


◆ 受け入れ当初は懸念だらけ


今となっては、外国人介護人材が働くことは当たり前の光景ですが、本格的に増え始めたのは技能実習制度に介護職種が追加された2017年からです。


技能実習での受け入れにあたっての要件は、厚生労働省の「外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会中間まとめ」の提言内容に沿って設定されています。


この中では、「介護が“外国人が担う単純な仕事”というイメージにならないように」「介護サービスの質を担保するとともに、利用者の不安を招かないように」などの懸念事項もあげられています。当時は受け入れに消極的な介護現場も多くありました。

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しかしながら、現場での受け入れ体制の整備、国や業界団体による支援などもあり、外国人介護人材が働きやすい環境が徐々に整えられてきました。今では4制度で来日後、施設長などの管理職に就く方や現場のリーダー職として後輩の育成を担っている方も多くいます。


外国人介護人材を「どう確保するか」ということだけでなく、「どう活躍してもらうか」ということに着目した取り組みを更に推進していくことも、今後より重要となるのではないでしょうか。


◆ 更なる活躍に期待


外国人介護人材を受け入れた当初は、制度の趣旨は別として、単純に労働力の確保として捉えられている側面が大きかったと言わざるを得ません。ただ、ここにきて彼らのポテンシャルは他に変えがたいものとなっています。


「現場の雰囲気が明るくなる」、「コミュニケーションが活発になる」。


これはよく言われることですが、その他にも「わかりやすい説明、根拠を持った説明で日本人職員の指導力が上がる」など、外国人介護人材の受け入れが介護の質の向上につながったという声も聞かれます。また、情報共有などのためにICT機器の導入が進んだ事例もあります。

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さらに、今後増加する外国人高齢者のケアにも重要な役割を果たすと考えられます。


出入国在留管理庁の発表によると、2023年末の在留外国人数は341万992人と過去最高を更新しました。外国人住民の増加に伴い、外国人高齢者も増加しています。


しかし、言語や文化などの違いから介護現場での受け入れにはまだまだ課題があり、利用者を尊重したケアが提供できない場面もあります。その際に、外国人介護人材は利用者の背景理解や状況把握がしやすく、また、外国人介護人材が就労している施設・事業所は受け入れの配慮がしやすいと考えられます。


将来的には、外国人介護人材は直接的なケアに留まらず、介護支援専門員や医療・介護通訳としてのつなぎ役、外国人高齢者の代弁者としての役割も期待されています。外国人介護人材が活躍しやすい環境の整備に引き続き努めることは、日本の介護現場に様々な好影響をもたらす大きな可能性を秘めているのではないでしょうか。


参考:外国人高齢者の支援に関する事例集~外国人介護人材の活躍に着目して~


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