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2024年5月3日

【先見】早くも始まった“次の攻防” 財務省が迫る介護改革、何が実行されるのか

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《 全国介護事業者連盟・斉藤正行理事長 》

新年度を迎え、介護報酬改定が4月1日に施行されました。その直後、4月16日に財務省の審議会(財政制度等審議会)が開かれ、社会保障をテーマとした提言が示されました。【斉藤正行】

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毎年公表されるこの審議会の提言に、介護関係者は常に戦々恐々としています。財政健全化を目指す内容となり、介護報酬の抑制や利用者負担の引き上げなど、介護関係者にとっては歓迎し難い施策が大多数を占めるためです。


今回の提言には、特別目新しいメニューがあるわけではありません。しかしながら、濃淡のついたその内容の中には、何としても3年後の法改正・報酬改定で実現させたいという財務省の強い決意を感じ取れる厳しい内容が、いくつか含まれています。


今回の介護に関する提言は大きく9つです。

1.ICT機器を活用した特養・通所介護等の人員配置基準の柔軟化
2.経営の協働化・大規模化の推進
3.集合住宅(サ高住・住宅型有老等)におけるサービス提供のあり方
4.介護保険外サービスの柔軟な運用。ローカルルールの確認
5.人材紹介会社に対する規制強化
6.要介護1と2の介護保険外し
7.ケアプラン作成の利用者負担の導入
8.利用者の2割負担の対象拡大
9.老健等の多床室の室料負担の見直し

こうした9つの提言の中で、今後の大きな論点になると予測される、法改正に関する3つと報酬改定に関する1つについて、中身を深堀りしていきたいと思います。

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まず、法改正に関する1つ目は、「6.要介護1と2の介護保険外し」です。財務省の具体的な改革の方向性(案)は、

(1)軽度者(要介護1・2)に対する訪問介護・通所介護を地域支援事業へ移管すること。


(2)段階的に、生活援助サービスをはじめ、地域の実情に合わせた効率的な提供を可能にすべき。

となっています。


これは長年にわたって財務省が提言し続けているものです。厚生労働省の審議会(社保審・介護保険部会)でも次の法改正までに再び議論を行う方針が示されており、今後の大きな焦点の1つとなることは間違いありません。


ただし、流石に一足飛びに訪問介護や通所介護の要介護1と2を総合事業へ移すことは非現実的です。現状のルール下で実現されれば、ほとんどの事業者のサービス継続が困難となる可能性すらあり、介護現場からは大反対の声があがっています。


まずは、訪問介護の生活援助を先行して総合事業へ移すことが議論の対象になると思います。


しかしながら、生活援助=専門的な介護が不要、というわけではありません。また、身体介護のみを介護保険に残す場合は併用ルールを定める必要もあり、詳細に議論すべきポイントが多数あります。


いずれにせよ、この問題は、まずは自治体の裁量にルールの大部分を委ねている現行の総合事業のあり方を今一度見つめ直し、事業継続が可能なルール作りを進めない限り、事業者の理解を得ることはできません。そうでないと、地域に大勢の介護難民を生み出すことにつながりかねず、極めて慎重な議論が求められます。

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2つ目は、「7.ケアプラン作成の利用者負担の導入」です。こちらも介護保険部会で、次の改正に向けて議論を深めていく方針が示されています。


先の要介護1と2の介護保険外しと比べれば、こちらは実現される可能性が高いテーマと言えるでしょう。厚労省は今年度より、「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」を発足させました。この検討会の動向も、次の改正に向けた介護保険部会での議論に影響を及ぼすことになりそうです。


3つ目は、「8.利用者の2割負担の対象拡大」です。財務省による具体的な改革の方向性(案)は、

(1)2割負担の対象者の範囲拡大を早急に実現すべき。


(2)将来的には原則2割負担とし、3割負担の判断基準も見直すこと。

となっています。


2割負担の対象拡大は、一旦は今回の2024年度改正で進められる方針が示されたものの、物価高騰の影響などを踏まえた政府が、最終的に次の改正まで見送った経緯があります。次の改正での実現可能性が最も高いテーマであり、具体的な中身の詰めが大きなポイントとなるでしょう。

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最後に、財務省の報酬改定に関する重要な提言は、「3.集合住宅(サ高住・住宅型有老等)におけるサービス提供のあり方」です。具体的な改革の方向性(案)は、

(1)集合住宅も施設や居住系サービスと同様に、自治体による整備計画に基づいた新規開設の上限を設けること。


(2)集合住宅のサービス利用については、区分支給限度基準額ではなく特定施設の報酬を利用上限とした仕組みとすること。


(3)生活援助サービスに関する自治体のケアプラン検証をより実効的に行うこと。

となっています。


(1)の案と(2)の案はいずれも、厚労省によって従来から議論されてきた内容とは論点が異なることからも、すぐに実現する可能性は低いと予測します。ただ、集合住宅に対する更なる減算の強化やケアマネジメントの公正中立性の確保に向けた議論に、一層拍車がかかることになると感じています。


今回の報酬改定には、訪問介護の「同一建物減算」について、在宅への訪問割合が1割以下であれば12%減算となる新たな見直しが盛り込まれました。次期改定をめぐる議論では、更なる減算割合の拡大や在宅への訪問割合の見直しとともに、過剰サービスに対するケアプラン点検の強化などがポイントになると思います。いずれにせよ、今回の財務省の提言からは、次期改定での集合住宅の改革に向けた強い意思を感じました。


今は新年度の報酬改定が施行されたばかりですが、3年後の法改正・報酬改定に向けた議論が、今回の財務省による提言からスタートしたと捉えるべきです。財政当局と介護業界との綱引きはすでに始まっています。そのことを意識し、皆さまとともにこれからの議論の行方に注目していかなければなりません。


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