新年度に入り、介護保険の制度改正や報酬改定が施行されました。居宅介護支援の内容についても、各保険者が集団指導の開催などを通じて皆様へ基本的な説明を行ったかと思います。【壷内令子】
今回も大変多くの変更点がありました。質の高いケアマネジメントを推進する観点からは、特定事業所加算をはじめとした各種加算の要件の見直し、法定研修のカリキュラムの見直しなどが実施されています。また、オンラインモニタリングの解禁や逓減制の更なる緩和、福祉用具の貸与・販売の選択制導入など、新たな施策も多く講じられています。
制度改正・報酬改定は3年に1度ですが、それぞれの内容を4月1日から完璧に理解し、適切に実施していくことは容易ではありません。並行して利用者支援に尽力しているケアマネジャーにとって、心身ともに大変な作業となるのではないでしょうか。
もっとも、これは保険者の方々も同じです。この時期は事業所からの問い合わせへの対応にも追われていることでしょう。
そして、必ずと言っていいほど新たなローカルルールが出現します。法令の解釈の違いなどが生じ、隣り合う保険者間でもルールが異なるという事例もよく見られます。
もちろん、それが地域の実情に合った柔軟な「良いローカルルール」であればなんら問題はありません。しかし、いたずらに業務負担を増やす「悪いローカルルール」が出てきてしまうこともしばしば…。そうなると、限界ギリギリで活動している多忙なケアマネジャーを更に追い詰めることになってしまいます。
「国が明確な決まりを定めるべき」「曖昧なルールに悩まされるのはいつも現場」。
こうした声を研修会などでよく聞きます。「軽微な変更」についても明確な基準がないため、使うのに戸惑うケアマネジャーは少なくありません。
とはいえ、個々の規定が全て白黒はっきりと分けられてしまったら、それはそれで運用しにくいのではないでしょうか。現場で発生する問題が、そのはっきりした基準に適合しない場合も多々あると考えられるからです。
さらに、高齢者を支える環境やリソースは地域によって大きく異なります。そのことを考慮に入れ、地域ごとの創意工夫で柔軟な対応をとる余地を残しておくために、あえて規定に幅を持たせているという側面もあるでしょう。
つまり、保険者やケアマネジャーは一定の裁量権を持つことを許されています。これはむしろ前向きに捉えるべきことかもしれません。
とにかく初めが肝心です。やっかいな「悪いローカルルール」が出てくる前に、ケアマネジャーみんなで阻止しましょう。
そのためには、個々のケアマネジャーが省令や解釈通知、Q&Aなどの書きぶりをしっかりと把握し、曖昧な部分について保険者へ相談を持ちかけるなどの対処が必要です。地域の職能団体や協議会などを通じて、主任ケアマネジャーやリーダーたちが保険者と解釈をすり合わせる場を持つことも有効です。
悪意のもとで生み出されるローカルルールはありません。ケアマネジャーの業務負担をこれ以上増やさないためにも、保険者との連携を強化し、有効な関係を作ることが大切です。制度改正・報酬改定が施行されるこの時期はまさに、それができる最適な機会ではないでしょうか。