今回の参議院選挙は、当初の予想通り与党圧勝の結果となった。おそらく約3年間は国政選挙がないため、与党内の政治力学によって財配分や政策の方向性が決まり、野党の影響力はかなり低下するだろう。【結城康博】
このような政治状況下で、次の2024年度の介護報酬改定を大胆に占ってみたい。
私は、外れてほしいと願うが、マイナス改定になると予測する。せいぜい良くてプラスマイナスゼロだ。
ただし、介護職員の更なる処遇改善は高い確率で実施される。その反面、本体報酬は大幅に引き下げられ、介護事業所の経営の深刻さは増すばかりだろう。いわば2015年度のマイナス2.27%改定の再来となる。
2015年度は処遇改善分としてプラス1.65%、認知症ケアなどの充実分としてプラス0.56%が手当てされた一方で、基本報酬などがマイナス4.48%とされる衝撃的な内容だった。このような極めて厳しい結果を予測した理由として、以下の3点をあげたい。
第1に、現在の政策課題として「介護施策」の優先度が低く、「物価高対策」「防衛費増加論」「財政赤字対策」といったことが重視されている。特に「防衛費増額論」は、先の「骨太の方針」にも位置付けられており、当然、どこからか財源を工面しなければならない。いわば介護給付費削減策が、その1つとして使われかねない。
第2に、近年では2018年度改定、2021年度改定、そして2022年度改定と、3回連続でプラス改定が続いている。4回連続のプラス改定は、かなりの政治力学がなければ難しい。
第3に、今回の参議院選挙の結果で、自民党内の政治力学に変化が窺える。例えば、自民党内の全国比例候補者の当落をみると、医師会、歯科医師会、看護協会、薬剤師会といった医療系団体の候補者は全員当選した。一方、介護系団体の候補者は残念ながら落選している。2024年度改定は診療報酬との同時改定であり、ただでさえ介護は医療を上回ることができない。
確かに、自民党で「介護」に関心のある議員は他にもいる。公明党議員も同様である。しかし、全国比例票は各産業の優先度を鑑みる尺度として認識され、介護のそれが少なかったことは、予算配分プロセスで大きく影響してくるだろう。岸田首相は引き続き介護職員の処遇改善を実施していくとしているが、2024年度改定を優遇するとは決して言っていない。
しかし、本体部分が大幅なマイナス改定となれば、介護事業所の経営状況は悪化してしまう。結果、介護職員の働く環境にマイナスの影響を与えることになる。場合によっては、介護事業を撤退する事業者が一気に増えてしまい、利用者へのサービスの低下にもつながりかねない。
繰り返すが私の予測が外れてほしい。ただ、今の状況をみると2015年度改定の悪夢が頭をよぎらずにはいられない。