【必須】新人の離職を防げ! 介護の人材育成、新年度に欠かせない5つのステップ
新年度になり、みなさんの職場でも、新採用や異動などで新たなスタッフを迎えたところも多いことでしょう。
質の高いケアやサービスを提供し、持続可能な介護現場を作るためには、人材の育成は欠かせません。しかし、せっかく採用したスタッフが「現場に入れてほったらかし」にされ、早期の離職につながってしまっているケースも少なくありません。
では、理想の介護現場をつくるためには、どのような人材育成の取り組みを行えばよいのでしょうか。ここでは5つのステップに分けて考えてみたいと思います。
◆ 介護現場の人材育成の悩みごと
介護労働安定センターの調査結果によると、2022年度の介護職員の離職率は14.4%となり、過去最低の水準をキープしています。また、以前は大きかった全産業平均(13.9%)とのギャップも、徐々に縮まってきています。処遇改善の充実や、事業者のみなさんが働きやすい職場づくりの努力を続けてきた結果が、これらの数字にも表れていると言えるでしょう。
しかしながら、離職者の勤務年数を見てみると、1年未満の離職が34.7%、3年未満の離職が60.1%を占めています。早期離職の防止や定着促進の方策として、労働条件の改善、フレキシブルな働き方の採用、職場内のコミュニケーションの活性化など様々な取り組みが行われているものの、なかなか結果に結びついていないのが現状です。
介護現場の管理職やリーダーのみなさんとお話をしていても、「人材育成に十分な時間が取れない」「ユニットやスタッフによって育成のレベルにばらつきが出てしまう」といった声がよく聞かれます。
◆ 人材育成のポイント
ケアの質を高め、利用者のみなさんから選ばれるサービスを提供するためには、体系的な人材育成が欠かせません。人材育成がうまくいくと、定着率は高まり、スタッフひとりひとりのスキルが上がり、法人や施設が理想とするサービスに近づくことができます。
さらに、次の人材を育てられるリーダーを育成できれば、持続可能な介護現場を作り上げることができるでしょう。
では、介護現場での人材育成を成功させるためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか?
(1)人材育成ビジョンをつくる
人材不足に悩まされている介護現場では、新しいスタッフを採用したとき、「とにかく短期間で一人前に育てよう」という方向で育成が行われがちです。しかし、「一人前」とはどういう状態でしょうか? 理想とするケアやサービスのあり方が施設や事業所によって異なる以上、それぞれに求められる人材像が存在するはずです。
まずは、「どのような人材を育てるのか」というビジョンをつくることが大切です。その際に重要なのは、施設やユニットのビジョンの立案と同様に、「プロセスを重視する」ということ。トップダウンではなく、いま働いているスタッフの声も取り入れながら「みんなで取り組む」ことが、「生きた」人材育成ビジョンをつくるためのポイントです。
(2)ひとりひとりに合ったOJTを実施する
多くの介護現場では、OJTによって人材育成が行われています。しかし、「とにかく現場で仕事を覚えてもらおう」という方針のもと、「現場に入れてほったらかし」という状態になってしまっていることも少なくありません。
OJTとはただ単に「現場に入れて教える」ことではなく、「Show→Tell→Do→Check」のサイクルを用いて必要な技能を意図的、計画的、継続的に習得させる技法です。人材育成ビジョンに基づき、身につけるべきスキルを可視化し、ひとりひとりに合わせたオーダーメイドの育成計画を立て、PDCAサイクルを用いて実行していくことが求められます。
(3)コーチングの技術でモチベーションを高める
一通りの業務内容を覚え、仕事に「慣れて」きた若手スタッフに立ちはだかるのが、モチベーションの低下という壁です。早期離職を防ぐためにも、この段階で適切な対応を行うことが重要となります。
ある程度仕事ができるようになると、どうしても上司や先輩からの関わりが薄くなりがちです。若手スタッフの力を伸ばし、正しい方向へ導くためには、指導するスタッフが効果的な「褒め方」や「注意の仕方」を身につけ、適切な関与を続けることが大切です。モチベーションに関する理論やコーチングの理論・技法を学ぶことが、大いに役立つことでしょう。
(4)コミュニケーションでチームをひとつにする
年齢、性別、経歴、国籍・・・と、近年の介護現場には、多様なバックグラウンドを持ったスタッフが集まってきています。このような状況で、チームの進むべき方向に沿った人材育成を成功させるためには、スタッフひとりひとりとの適切なコミュニケーションがカギとなります。特に、チームのメンバーが常に顔を合わせるわけではないシフト制の職場では、その重要性がさらに高まります。
1on1を実施して定期的に目標管理をしたり、成長を促すためのフィードバックをしたりすることにより、コミュニケーションの量を増やすだけでなく、その質を高めていくことができます。
(5)次世代のリーダーを育てる
そして、人材育成の最後のステップにおいては、権限を委譲し、独り立ちしてもらうことになります。しかし、決して「ほったらかし」にするのではなく、必要に応じた適切なサポートを行うことによって、自律した「働き方のスタイル」を確立してもらうようにすることが大切です。
また、次のリーダーを育成するために、「リーダーになりたい」と思ってもらえる職場をつくること、そして組織が一丸となって次世代の育成に取り組むことが重要です。
介護現場の「人材育成」の重要性は、既に広く認識されています。ただ、日々の業務に追われる忙しい現状の中で、どうしても経験や勘に頼った自己流の方法がとられがちです。計画や根拠、そして様々な理論に基づいた育成に取り組むことが、持続可能な現場をつくるために大切なポイントです。
ぜひ、みなさんの施設・事業所の人材育成のヒントにしてもらえればと思います。