ケアマネジメントをめぐる様々な課題と向き合う議論がいよいよ始まった。【Joint編集部】
厚生労働省は15日、新たに発足させた検討会の初会合を開催した。
主な論点として、ケアマネジャーの役割・業務の範囲、人材の確保・定着の方策、法定研修のあり方、サービスの質の向上、テクノロジーの活用などを提示。委員を務める現場の関係者や専門家とともに、これから秋頃にかけて議論を深めていくとした。
検討会の取りまとめは、今後の制度改正などに直結する来年以降の審議会(社保審・介護保険部会)の動向にも影響を与えていく。
厚労省で介護保険を所管する老健局の間隆一郎局長は冒頭の挨拶で、高齢者の増加や福祉ニーズの多様化・複雑化がこれから更に進むことを念頭に、「介護支援専門員の重要性はますます高まっていく」と強調。「その専門性を十分に発揮して頂ける環境を整備するとともに、人材の確保を図っていく対策を講じることが急務」と言明した。
◆「クレーム対応も大変…」
この日の会合では、厚労省が提示した主な論点に沿って委員が意見を交換した。このうちケアマネの役割・業務の範囲については、その幅広さに伴う負担の重さを懸念する声があがった。
日本介護クラフトユニオンの村上久美子副会長は、「ケアマネジャーがなんでも屋になっている。業務範囲の明確化が必要ではないか」と主張。青い鳥合同会社の相田里香代表社員は、「ケアマネジャーが本来業務として捉えていることと、利用者、家族、他職種、多機関が求めている役割に大きな乖離が生じている。役割の範囲をしっかり明確化していくことが重要」との見解を示した。
このほか、「利用者からの要望の多様化、クレームの対応、ハラスメントなどで多くのケアマネジャーが大変しんどい思いをしている」と問題を提起する委員もいた。
日本介護支援専門員協会の柴口里則会長は、「あれもこれもと求められても全部はできない。個々の役割・業務の重要性は認識しているが、介護支援専門員も1つの職業。法の下に定められた労働時間の限界もある。当然、手弁当ではできない」と述べた。そのうえで、「誤解してほしくないが、当協会としても介護支援専門員に対する期待にしっかり応えたいと考えている。我々は介護保険の枠にとらわれないトータルケアマネジメントを担っていきたい。そのためにも抽象的・理想的な議論ではなく、居宅介護支援の現状や労使関係、事業環境などを加味した現実的な議論をして頂きたい」と要請した。
また、国際医療福祉大学大学院の石山麗子教授は、「連携する多職種、他機関、他制度からみたケアマネジャーとは何か、ということがはっきり見えてくれば、『何かあったらケアマネさん』の“何か”が明確化されてくる」と指摘。東京経済大学の常森裕介准教授は、「ケアマネジャーが何をやるかということと同時に、他の専門職に何をやってもらうかを考えなければいけない。他の法制度も視野に入れて議論していくべき」と促した。