新年度の居宅介護支援の介護報酬改定では、介護支援専門員1人あたりの担当件数の上限が、現行の39件から44件へ引き上げられます(*)。事業所の運営基準も、これに合わせる形で見直されます。【石山麗子】
* 逓減制緩和の要件を満たせば49件までで、減算は50件目からの適用となる。
事業所にとっては運用の裁量権が広がる一方で、ケアマネジャーからは「そんなにたくさんのケースを担当するのは難しい」という声も聞かれます。
ミスを起こさず、継続的・安定的に担当できる件数はケアマネジャーによって違います。また、人生のステージ、家族の状況や体調などから、ケアマネジャーによって働き方の希望も異なります。
ですから、今後の居宅介護支援事業所の運営では、個々のケアマネジャーがどのような働き方をしたいのか、何件担当できそうかなどを確認していくことが大切です。「一律に◯◯件までは担当してください」というものではありません。
今回、居宅介護支援事業所の運営基準の解釈通知には、「管理者の責務」が新設されました。そこから伝わってくる意図はまさに、事業所の収入増のみを目的とした運営とならないよう管理者にしっかりと確認してほしい、というメッセージです。
居宅介護支援|運営基準の解釈通知
(12)管理者の責務
指定居宅介護支援事業所の管理者は、介護保険法の基本理念を踏まえた利用者本位の指定居宅介護支援の提供を行うため、当該指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員等の管理、利用申込みに係る調整、業務の実施状況の把握等を一元的に行うとともに、職員に指定基準の規定を遵守させるために必要な指揮命令を行う必要がある。
また、管理者は、日頃から業務が適正に執行されているか把握するとともに、従業者の資質向上や健康管理等、ワーク・ライフ・バランスの取れた働きやすい職場環境を醸成していくことが重要である。
管理者は、事業所のケアマネジメントが従来と変わらない質を担保できているかどうか、一層用心深くみていくことが重要です。ケアマネジャーとは個別に、働き方の希望や業務遂行上の悩みなどについて話す機会を設ける、といった工夫も必要です。こうした対応はケアマネジャーの離職防止、定着率向上の成果にもつながるでしょう。
管理者は時に、経営者とケアマネジャー双方のよき理解者としての立場を求められることがあります。経営者には早い段階で管理者の責務が新設されたことを理解してもらっておく必要がありそうです。