1月22日、社会保証審議会・介護給付費分科会で来年度の介護報酬改定の全容が決定されました。
居宅介護支援の基本報酬は、0.93%ほど上がるプラス改定となりました。
前回に引き続き、居宅介護支援費本体のみでなく特定事業所加算もプラスとなり、それは本体報酬よりも大きな上げ幅となりました。
仮に要介護3〜5かつ特定事業所加算を算定する場合、27単位上がることになります。1点10円で計算すると、270円×40人=1万800円。ケアマネ1人につき1万円強の報酬増となります。
注)この記事では配信当初、掲載時のJoint編集部の誤りで「利用者1人につき1万円強の報酬増」と記載しておりましたが、正しくは「ケアマネ1人につき1万円強の報酬増」でした。お詫びして訂正致します。この記事は訂正後の記事です。
東京都内の居宅介護支援事業所であれば、さらに上乗せされます。来年度からの新たな施策「居住支援特別手当」により、ケアマネにも勤続5年以内で月2万円ずつ、勤続6年以上で月1万円ずつが支給され、これをそのまま賃上げに充てることができます。
報酬だけではありません。ケアプランデータ連携システムの活用かつ事務員の配置で、ケアマネ1人あたり49件まで担当できるようになることも、売上増につながると見込まれます。
業務負担の軽減策にも注目です。他のサービスとの連携に基づくオンラインモニタリングをうまく運用すれば、訪問頻度を2ヵ月に1回に減らすことも可能となります。来年度からすぐに、とはいかないまでも、生産性向上を徐々に実現していく事業所が増えていくでしょう。
新たな同一建物減算については、思ったよりも下げ幅が小さく5%にとどまりました。他のサービスでは10%超となっているため、これは小幅な引き下げと言えるでしょう。
減算で言うとBCPの未策定減算が1%、高齢者虐待防止措置の未実施減算が1%で新設されます。未対応の事業所は、2025年3月末までにしかるべき措置を講じなければいけません。
来年度の介護報酬改定をどう評価すべきか − 。居宅介護支援事業所の経営という視点からみると、少なくとも今より良い条件になることは間違いありません。基本報酬は上がり、ケースを増やせる余地は広がり、生産性向上の手段の選択肢も増えます。胸をなでおろした事業者も少なくないのではないでしょうか。
これをどう活かすかは、個々の事業者の手腕が問われるところです。人材不足が更に顕在化していく今後は、個々のケアマネの処遇改善をどこまで具体化できるかが極めて重要な要素になります。またそれは、今回の介護報酬改定の施策に込められた思いでもあります。
我々にとってはしばらく正念場が続くでしょう。生産性向上、サービスの質の向上、賃上げ、より魅力的な労働環境の整備などを実現しなければ、人材不足で業界全体が先細りになってしまいかねません。そうなれば、介護サービスを受けられない高齢者も増えてしまうでしょう。私も創意工夫で経営努力を積み重ね、成果を出していきたいと思います。
今後、厚労省は例年通りであれば3月頃に「全国介護保険担当課長会議」を開きます。その後、今年度末には介護報酬改定の解釈通知やQ&Aを発出するとみられます。
すでに来年度の制度改正・報酬改定の内容はかなり出揃いました。解釈通知待ちの部分もありますが、来年度以降に向けて今から準備できることには、早め早めに取り組んでいった方がいいでしょう。