【介護報酬改定】通所介護は進路を保って突き進め! 求められる変革へのぶれない意識=斉藤正行
昨年12月19日に、来年度の介護報酬改定を議論してきた審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)が「審議報告」を取りまとめました。また、同月20日の閣僚折衝を経て全体の改定率も正式に決定されました。【斉藤正行】
厚生労働省はこれを受けて、各サービスの報酬・加算などの具体的な見直し内容を詰めていくことになります。
今回はその中で、通所介護・地域密着型通所介護のポイントについて改めて整理するとともに、事業者が備えるべき心構えをお伝えしたいと思います。
デイサービスに限定した見直しは次の6項目となります。
1.3%加算・規模区分特例の見直し
2.認知症加算の見直し
3.入浴介助加算の見直し
4.個別機能訓練加算の見直し
5.豪雪地帯等における通所介護費の所要時間の取扱いの明確化
6.送迎に係る取扱いの明確化
このうち「3%加算・規模区分特例の見直し」は、新型コロナウイルスの「5類」への移行を受けてコロナのみに着目した特例措置を改め、災害や新たな感染症が発生した際の幅広い特例として制度が残ることになります。
「認知症加算の見直し」は、算定要件の変更を意味します。個別の事例検討、認知症ケアに関する研修・会議などの定期開催が加わる一方で、認知症のご利用者の割合が緩和されることになりました。
「入浴介助加算の見直し」では、加算Ⅰの算定要件で職員に対する研修などの開催が新たに求められます。加算Ⅱの算定要件については、医師らによる利用者宅への訪問を一定の条件下で介護職も対応できるようにするなど、より取得しやすいよう緩和されることになりました。あわせて、施設の浴室環境が必ずしも個浴槽でなくても算定できることなどが改めて明確化されます。
「個別機能訓練加算の見直し」は、加算Ⅰのロが対象です。機能訓練指導員の配置要件の緩和、単位数の削減が行われることになりました。
「豪雪地帯等における通所介護費の所要時間の取扱いの明確化」は、ご利用者の送迎時において、天候の影響などによる到着時間の遅れも考慮して基本報酬の算定時間を決められることが明確化されます。
「送迎に係る取扱いの明確化」は、送迎先の定義が見直されるとともに、他の介護・障害福祉事業所と連携した送迎が可能であることが明確化されます。
この6項目に加えて、他のサービスと共通する見直しも実施されることになります。通所介護に大きく影響する項目としては、「ADL維持等加算の見直し」があげられるでしょう。アウトカム評価をいっそう充実させる観点から、ADL利得の計算方法の簡素化や加算Ⅱの算定要件の緩和が行われます。
また、「科学的介護推進体制加算」については、LIFEの活用促進の観点から、入力負担の軽減やデータ提出時期・頻度の統一化が図られます。
その他にも、処遇改善関連加算の1本化、BCP未作成の事業所に対する減算の導入、高齢者虐待防止の推進、身体拘束の適正化の推進、テレワークの取扱いの明確化、管理者の兼務範囲の明確化、技能実習生らの配置要件の緩和などが行われることになります。
今回の「審議報告」を踏まえると、6年に1度の同時改定ではありますが、事業者への影響度については2021年度の改定より限定的であると思います。
しかしながら、だからといって事業者が安心感を得て、変革への意識が欠如してしまうことは絶対に避けなければなりません。
今回の改定は、2021年度の改定で示された従来の介護保険制度とは異なる新しい概念、「科学的介護」「自立支援・重度化防止」「生産性向上」といったテーマに基づく改革を現場へ確実に浸透させるためのもの、との認識を持たなければなりません。
事業者は、運営する通所介護の専門性を高める努力をしなければいけません。自らのコンセプトや事業特性に応じて、制度改革の方向性を踏まえた対応に一段と注力することが求められると考えるべきでしょう。