医療・介護の報酬改定、実施時期にズレ 審議会で批判の声 「混乱する」「分断が生じる」
来年度の介護報酬改定の施行時期をサービスごとに2つに分ける − 。厚生労働省が18日に明らかにしたこうした方針を、同日の審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)では日本医師会の委員が痛烈に批判した。【Joint編集部】
日本医師会の江澤和彦常任理事は、「来年度はいわゆるトリプル改定。これだけ医療・介護・福祉の連携強化が叫ばれながら、改定時期の足並みが揃わず、分断が生じる結果となったことは極めて残念」と酷評。「今回はトリプル改定ならではの施策で、医療・介護・福祉それぞれに呼応するものが多々ある。今この場で予測できない混乱が今後たくさん起きる可能性は十分ある」と問題を提起した。
改定の実施時期を6月にずらすメリットは、各サービスの新たな運営基準や報酬・加算の単位数、算定要件などが決まってからの期間を長くできること。これが介護施設・事業所やベンダの負担軽減につながる。今は年度末の決定から急いで準備しなければならず、改定直前の3月は“デスマーチ”とも呼ばれている。
厚労省は医療保険の診療報酬改定について、実施時期を従来の4月から6月に変える方針を既に今年8月に固めていた。このため、制度横断的に全体を合理化することの必要性を訴える声が多く上がり、介護報酬改定などもタイミングを合わせるかどうかの判断が注目されていた。
厚労省は18日の審議会で、医療分野との関わりが特に深い訪問看護、訪問リハ、通所リハ、居宅療養管理指導の4サービスに限り、介護報酬改定を6月に施行すると発表。それ以外の多くのサービスについては、従来通り4月の施行とする意向を示した。
国の判断に影響を与えた要素の1つに、介護報酬改定を6月に変えることに対する自治体や介護現場の関係者らの根強い慎重論がある。例えば、
◯ 都道府県や市町村の事業計画の策定、保険料額の算定といった重要事務の大幅な変更を要する
◯ 処遇改善加算など、年度単位での計画策定・運用が必要な仕組みに混乱が生じる
◯ 介護報酬の引き上げ、処遇改善の拡充の実施時期まで遅くなってしまう
などの反対意見が出ていた経緯がある。
厚労省・老健局の間隆一郎局長は18日の審議会で、「保険者の実務、事業者の経営状況、現場のシステム改修の業務負荷などを総合的に判断した」と説明。「将来的には6月施行に合わせることも検討していきたい」と述べた。
これに対し、日本医師会の江澤常任理事は、「医療・介護・福祉の一体感がそがれてしまうことが本当に残念。現場が混乱しないよう、国には自治体と連携した手厚く丁寧な対応を求めたい」と要請。「医療分野で8月に決まっていたことが、介護分野ではこの年末まで決まらなかった。自治体も現場も、みんなが本当に困っていた。この事態を招いたことをぜひ猛省して頂きたい」と語気を強めた。