次世代型電動車いすの開発で先行している「WHILL」は13日、11月から販売を始める「WHILL Model S」の先行受注を開始したと発表した。“歩道を走れるスクーター”と位置付けるこの「Model S」について担当者は、「電動自転車より安定して走行でき、シニアカーより日常になじみやすい、新しいカテゴリのデザイン」と紹介している。【鈴木啓純】
誰もが乗りやすくするため簡単な操作にこだわった。機体のハンドルにあるレバーを握れば、前進6キロ、後進2キロのスピードで進むことができ、離せば自動でブレーキがかかる。1度の充電で最長33キロの走行が可能。7.5センチまでの段差なら乗り越えることができる。
使いやすく安全な“高齢者の足”の普及は引き続き大きな課題だ。
運転免許の返納件数が年間で60万件にのぼるなか、例えばシニアカーの流通台数は16万台弱にとどまっている。シニア向けモビリティ市場は今なお限定的。創業からこれまで特に、歩行領域の移動をカバーする先進的なプロダクト・サービスを積極的に展開してきたWHILLが、市場での存在感を一段と強められるかどうかに注目が集まる。
WHILLは、「免許返納後も心地よく走れるクルマ、自転車の代わり、長距離を歩くと疲れてしまう人の移動手段として、既存の移動手段では拾いきれなかった顧客ニーズを形にしていく」と説明。快適で自由な外出機会の創出と高齢者らの意欲の促進を後押ししていく。
WHILLはこのほか、本人と家族が外出情報、居場所などを共有できる「WHILL Family App」も開発。そのアプリや保険、ロードサービス、メディカルアシストなどをセットにした「WHILL Premium Care」を、来年1月以降に提供し始める予定だ。
杉江理CEOは、「創業前、100メートル先のコンビニに行くのをあきらめてしまう車いすユーザーの姿を見て、WHILLの開発を始めた」と振り返る。「Model Sがあることで、安全で不安なく外に出かけられる人がどんどん増えればよい。シニア向けの移動手段の選択肢が少ないなか、新たな定番になると信じている」と語った。