【介護報酬改定】職員の処遇改善が不可欠 審議会で認識一致 関連加算の一本化も 課題は財源の確保
来年4月の介護報酬改定に向けた協議を重ねている審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)で8日、介護職員の処遇改善が取り上げられた。極めて深刻な人手不足にどう対応していくか − 。これは最も重要なテーマだ。【Joint編集部】
会合では委員が、更なる処遇改善が不可欠という認識で一致。既存の3加算(*)を一本化するなど、具体策を簡素化して現場の負担を軽くすることの必要性も確認した。また、「各サービスの基本報酬の引き上げを」との要望も相次いだ。
* 既存の3加算=処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ加算
厚生労働省も委員と問題意識を共有している。今後の検討の視点としては、
◯ 処遇改善の措置をできるだけ多くの介護施設・事業所が活用できるようにし、現場を支える職員に届くようにする
◯ 新規人材の確保、適切な業務分担の推進、やりがいの醸成・キャリアアップを含めた離職防止につなげていく
◯ 処遇改善加算の「職場環境等要件」に基づく取り組みの実効性を高める
などをあげた。
厚労省は今後、年末に向けて具体策を固める議論を深めていく考えだ。最大の課題は必要な財源の確保。ここで政権の姿勢が問われてくる。委員からは介護現場の状況の厳しさを強調する声が相次いだほか、「広く国民的な理解が必要」との意見も出た。
◆「このままでは壊滅的になる」
全国老人保健施設協会の東憲太郎会長は、「一般企業では高水準の賃上げが実現しており、介護職の他産業への離職が急速に進んでいる。このままでは人手不足が危機的な状況から壊滅的な状況になる。介護職の賃上げに向けた財源の確保が必須」と主張。日本医師会の江澤和彦常任理事は、「介護現場からの人材の流出を重く受け止めるべき。他産業と遜色のない賃上げが必須」と提言した。
全国老人福祉施設協議会の古谷忠之参与は、「介護職員の給与と全産業平均の給与との格差はいまだ大きい。加算だけでなく基本報酬の引き上げもお願いしたい」と要請。民間介護事業推進委員会の稲葉雅之代表委員は、「関連加算が3つになって複雑化し、手続きもかなり煩雑だ。一本化などで思い切った効率化を」と求めた。
一方、全国老人クラブ連合会の正立斉理事は、「介護職員の更なる賃上げは必要だが、高齢者の暮らしも電気やガス、食料品などの物価が高騰するなかで厳しい。保険料、サービス利用料の負担増につながらない方法論を」と持論を展開。産業医科大学の松田晋哉教授は、「処遇改善をすれば保険料などが上がることになる。一番大事なのは国民の理解だと思う。処遇改善のためにも保険料などの引き上げが必要なんだ、という国民的な理解がないと先へ進まない」と指摘した。