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2023年9月7日

【必須】来年度の財務諸表の提出義務化、負担増を乗り越えろ カギは会計事務所の選択にあり=小濱道博

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《 小濱介護経営事務所|小濱道博代表 》

◆ 財務諸表の提出の義務化が始まる


5月12日に通常国会で成立した改正介護保険法により、介護サービスの経営情報(財務諸表)を所轄する都道府県知事へ報告することが、全ての介護事業者に義務化された。来年度から施行される。【小濱道博】

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事業者が提出をしない、または虚偽の報告を行った場合、行政は期間を定めて報告、もしくは内容の是正を命ずることができる。さらに、その命令に従わない時は指定の取り消し、もしくは業務停止の処分を下せるとされている。


実際にどこまでの内容を報告するかについては、これから厚生労働省が示すことになる。これは非常に重要だ。


現行のルールをみると、例えば訪問介護の場合、

「事業者は事業所ごとに経理を区分するとともに、指定訪問介護の事業の会計とその他の事業の会計を区分しなければならない」

とされている。他のサービスについてもこれを準用するとされているため、厚労省が報告内容でいわゆる本支店会計、かつ部門別会計を求めることは間違いないだろう。


自法人の財務情報を、可能な限り詳細に本支店別、部門別に集計することは、将来のM&Aや事業譲渡、不採算部門の撤退などを検討するうえで重要なエビデンスとなる。ただ、そのための業務負担は大きい。専門の事務員がいないと対応できないだろう。


◆ 小規模法人にとっては大きな負担増に


ここで問題となるのは、介護サービス事業者の7割が小規模ということだ。会計事務所の使い方をみても、領収書を丸投げして単なる記帳代行を依頼しているケースなどが多い。


事務員がいない法人も多く存在する。代表者自らか家族が経理事務を行っているところも少なくない。そのような経営者の多くは、財務諸表の読み方が分からないだろうし、関心があるのは納める税金の額くらいというのが現実だ。


会計事務所も介護保険制度に精通していることは希で、税金の申告のみという顧問形態が大部分である。会計の区分についての知識も皆無の場合が多い。これは、会計事務所が行っている業務が税金の申告であり、そのための税務会計が中心であるから当然のことでもある。


しかし、今回の財務諸表提出の義務化は、介護事業者の会計事務所の利用目的を大きく変えるだろう。税務申告とともに、財務諸表の提出に向けた資料作成を依頼することになるからだ。単に領収書を整理して決算書を作るだけ、では足りなくなった。

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◆ ニーズに合った会計事務所を選ぶ時代に


私が支援するある法人では、今回の財務諸表提出の義務化にどう対応していけばいいか、というテーマで幹部会議を開催した。その場には、税務顧問を依頼している会計事務所の関係者も同席していたが、会計の区分に関する知識が不十分であり、さらに、本支店会計を手がけたことがないということだった。


この法人は今後の事業展開にも前向きで、しっかりとした経営計画を策定し、予実管理を徹底していきたいという意思が明確にある。後日、会計事務所を変える方向で検討に入ったことは言うまでもない。


実は、財務諸表提出の義務化において、厳格な本支店会計や部門別会計を必ず行わなければならないということはない。小規模な法人には、時間のかからない簡便的な方法も用意されている。


ただし、依頼している会計事務所がこれを知らなかった場合、厳格な経理を求められて余分な手間がかかることになる。結果として負担は急増するだろう。


そうした場合、会計の区分に精通する会計事務所へ速やかに変えるべきだ。いまや介護事業者がニーズに合った会計事務所を選ぶ時代になった。


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