【介護報酬改定】居宅介護支援や訪問介護でのLIFE活用、審議会で慎重論 現場の負担などに懸念の声
厚生労働省は8月30日、来年4月の介護報酬改定に向けた協議を重ねている審議会でLIFEを俎上に載せた。【Joint編集部】
LIFEを活かした科学的介護を更に推進していく方策とあわせて、対象サービスを居宅介護支援や訪問介護、訪問看護などにも広げることの是非を論点として提示。委員からは施策の方向性に賛同する声があがったが、時期尚早ではないかといった慎重論も相次いだ。
◆ 前回改定からの検討テーマ
LIFEの本格稼働が始まったのは2021年度。その年の介護報酬改定では、現場に取り組みを促すインセンティブが特養や老健、グループホーム、小規模多機能、通所介護など多くのサービスに導入された。
一方、居宅介護支援や訪問介護、訪問看護などは異なる取り扱いとなった。
厚労省はこれらを対象外としつつ、当時の報告書にLIFEの活用を「今後検討していくべき」と明記。以後、調査・研究やモデル事業などを進めてきた経緯がある。来年度の改定で他のサービスのように、データの収集・提供・活用などを要件に含む加算が作られるかどうかが焦点の1つだ。
◆「まだまだ課題が多い」
厚労省は今回の審議会で、調査・研究やモデル事業などの成果を報告。現場からの前向きな反応として、「統一指標による定期的な評価によってケアの質が担保される」「評価の習慣が定着する」などが得られたとした。
他方、「データ入力の時間の確保が難しい」「使いこなすには職員の教育も必要」「身長、体重、栄養など共通的な情報は他事業所から連携して欲しい」などの意見もあったと説明。そのうえで、「更なる検討が必要」との認識を示した。
会合では複数の委員が、対応を急ぐべきではないとクギを刺した。
全国老人保健施設協会の東憲太郎会長は、「LIFEが導入されているサービスの現場では、データ入力が大きな負担になっている。フィードバックも十分に行われているとは言えない。現時点で対象サービスを広げることには反対」と主張。日本医師会の江澤和彦常任理事は、「小規模事業所への支援も必要ではないか。現状を踏まえると入力データの精緻化やフィードバックなどまだまだ課題が多く、対象サービスの追加は慎重に判断すべき」と促した。
このほか、LIFEの活用を積極的に進めていくべきという立場の委員もいた。今後、厚労省は年末にかけて更に議論を深める方針。具体策は秋にも提示される見通しだ。