介護施設は利益をため込んでおり、職員へ十分に還元していないのではないか − 。
財務省が先月末にこう問題を提起したことを受けて、特別養護老人ホームの経営者らで組織する全国老人福祉施設協議会は26日、「国民に誤解を与える」などと反論する声明を公式サイトに掲載した。【Joint編集部】
発端は6月30日に公表された今年度の「予算執行調査」だ。
財務省はこの中で、特養を運営する社会福祉法人の現預金や積立金が増えていると報告しつつ、「職員の給与水準は横ばい」などと主張。「一部の法人では、現預金や積立金が積み上がっているにもかかわらず、職員の給与に還元されていない」と持論を展開した。
◆「むしろ余裕はなくなった」
これに対し老施協は声明で、およそ4割の特養が赤字という目下の厳しい経営環境を強調した。
「現預金や積立金が積み上がっている」との見方に対しては、
◯ 財務省が法人の負債を考慮に入れていないこと
◯ コロナ禍でもサービスを安定的に提供するため、多くの法人が将来的に返済しなければならない融資を受けており、これが現預金などに含まれていること
◯ コロナ禍や建設費の高騰で、施設の新築や増築、改修、設備更新などの計画をいったん止めている法人があり、その原資も積立金などに含まれていること
などを説明。「むしろ余裕はなくなっており不適切。現預金・積立金は事業継続に必要な範囲内と言え、決して高いと評価されるような水準ではない」と言い返した。
老施協はあわせて、財務省の「特養職員の給与水準は横ばい」との認識に対し、福祉医療機構の調査結果を基に異議を唱えた。
2020年度と2021年度を比べると、「職員1人あたりの収益の伸び」より「職員1人あたりの人件費の伸び」の方が顕著に大きい(2.4倍)と説明。「根拠が不十分」と断じた。そのうえで、老施協は次のように見解をまとめている。
「財務省の指摘は、前提とする事実の認定を誤り、合理的な推論とは言えない結論を導いている。あたかも社会福祉法人の余裕財産が増えており、それを介護職員の給与に還元していないかのような印象を与え、国民に誤解を与えるものであり、遺憾と言わざるを得ない」