6月16日に閣議決定された今年の「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針2023)」に、医療・介護分野の有料職業紹介事業の適正化に向けた指導・監督の強化などが明記された。【Joint編集部】
7月10日の社会保障審議会・介護保険部会でも、介護分野の人材紹介・派遣事業が取り上げられた。実際、厚生労働省は、例えば「就職お祝い金」の禁止といった規制を徹底していくなど、指導・監督の強化に乗り出す構えをみせている。今回は、このテーマについて詳しく述べていきたい。
◆ 税金や保険料が原資!
人材紹介・派遣事業の手数料が負担だという介護現場の声が多くあってか、ようやく政府が本格的に対策に動いた。
厚労省の資料によれば、介護分野の人材紹介の常用就職1件あたり平均手数料は42万円(2021年度)だという。また、介護分野の派遣料金は1万4973円(2020年度)だと報告されている。こうしたデータからも、人材紹介・派遣事業の手数料がかなりの額であることが分かる。
もっとも、このような人材紹介・派遣事業者は法令順守がなされていれば何ら問題はなく、社会ニーズがあるからこそ存在している。厚労省も「適正な有料職業紹介事業者の認定制度」を設けて、優良な事業者の育成に取り組んできた経緯がある。
一方で、介護事業者が支払う手数料の原資の大部分は介護報酬だ。つまり、大切な税金や保険料が財源となっている。このため、人材紹介・派遣事業そのものは適法だが違和感を抱く人が少なくないのだろう。
◆ 多い実績数
特に問題なのが利用実績数の多さだ。厚労省の資料によれば、介護分野の人材紹介の常用就職実績は5万6939件(2021年度)。派遣労働者は3万4554人(2021年度)にのぼる。介護現場で働いている職員の一定程度が、人材紹介・派遣事業者に関連していることになる。
確かに、人材の確保が難しかったり欠員が急に生じたりすることもあるので、人材紹介・派遣事業者を介して雇用することは妥当だろう。むしろ、介護現場にとっては助かるに違いない。しかし介護事業者が、常時、採用努力をせずに、人材紹介・派遣事業者に依存している実態は問題だ。
◆ 介護事業者にも「減算」を!
私は、人材紹介・派遣事業のより適正な活用がなされるために、必要なら職業安定法を改正するなどして「手数料」の上限を設けるべきと考える。同時に、人材紹介・派遣事業者を介した雇用が一定数を超えている事業所に対しては、介護報酬を「減算」すべきではないか。
現在、人材紹介・派遣事業者のみの規制を強化する流れになっているが、実際、それらに依存する介護事業者の経営体質にも問題があると考える。確かに、介護人材の確保・定着の難しさが増していることは承知している。しかし、介護事業者の努力も促していかないと、全国的に介護現場の人事マネジメントが改善していかないのではないだろうか。