介護報酬改定、処遇改善が議論の軸に 切迫する人材危機 加算の一本化・拡充など焦点
厚生労働省は28日、来年4月に迫る次の介護報酬改定に向けた協議を進めている審議会を開催し、今月16日に公表した介護職員の「処遇状況調査」の結果を報告した。【Joint編集部】
委員からは、昨年10月に「ベースアップ支援加算」を設けたことなど累次の施策の効果を評価しつつも、更なる取り組みの必要性を指摘する意見が続出。関連加算の一本化による複雑さの解消、対象職種の拡大をはじめとする運用の弾力化、加算額(率)の引き上げなどを求める声が相次いだ。
公表済みの「処遇状況調査」の結果によると、常勤・月給で働く介護職員の昨年12月の給与額(*)は平均31万8230円。前年同月から1万7490円上がっていた。
*「ベースアップ支援加算」を取得している介護施設・事業所の介護職員の給与水準。基本給、各種手当、ボーナスなどを合計した“額面”で、税金や保険料が引かれた後の“手取り”ではない。詳しくはこちらの記事で。
もっとも、全産業の平均給与額(36万1000円)と比べると依然として4万円以上の乖離がある。他産業では今年に入って賃上げが進展しており、この差が再び拡大してしまう懸念も拭えない。
「介護職員の処遇改善は進んでいるが、人材確保の効果は乏しくまだまだ道半ば」
日本医師会の江澤和彦常任理事は現状をこう分析。連合の小林司生活福祉局長は、「社会的に賃上げの機運が高まっている中で、介護現場だけ“置いてけぼり”なんてことがあってはならない」とクギを刺した。
全国老人福祉施設協議会の古谷忠之参与は、「関連加算の一本化と分かりやすいルールの設定、原資の大幅なアップを」と注文。民間介護事業推進委員会の稲葉雅之代表委員は、「ケアマネジャーの処遇改善も必要」と促した。
厚労省はこれらを受けて、関連加算の一本化をはじめとする具体策の立案を図る意向を改めて示した。これから秋にかけて審議会で詰めていき、年内に大枠の方針を固めたい考えだ。
国の財政が厳しさを増すなか、介護職員の更なる処遇改善を実現させるには相応のリソースを確保しなければならない。例えば基本報酬や各種加算・減算の見直しなど、他の部分でどう給付費を抑制するかという議論も避けられないとみられる。あわせて、常駐・専任といった人員配置基準の緩和やテクノロジーの活用など、サービスをより効率的に提供できる体制への転換も論点になりそうだ。