「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」に介護職と介護支援専門員が明記されたのは、2018年3月でした。それ以前のガイドラインで“多職種”とは、あくまでも医療の中の多職種のことでした。【石山麗子】
人の暮らしや人生は医療だけでは支えられません。地域包括ケアシステムの深化に伴い、意思決定支援も幅広い領域の多職種による支援へと変化しました。
その質を高めるうえでは、人生会議(アドバンス・ケア・プランニング=ACP)を知っていることが前提となります。主人公であるご本人(一般国民)、そしてそれを支える医療・介護の専門職のどれくらいが、ACPを知っているのでしょうか。
厚生労働省は今月2日、「2022年度:人生の最終段階における意識調査の結果」を発表しました。
この調査は定点で確認されているものです。ACPについて知っていたかどうかの割合をみると、「よく知っている」が最も高かったのは介護支援専門員です。日頃から利用者本位で、その意向を大切に捉えていることが伺えます。
どの専門職も、「よく知っている」と回答した割合は5割弱です。確かに、この結果で認知度が高いとは言えませんが、経過に目を向ければ着実に向上しています。
例えば、医師は2017年度調査で「知らない」の割合が41.6%でしたが、2022年度調査では、「知っている」が45.9%へと劇的に変化しました。今は普及・定着に向けた過渡期、と言えるでしょう。
課題をあげるなら、主人公であるご本人(一般国民)の「よく知っている」の割合が5.9%と低いことです。
行政などからの広報はもちろん、今後も継続して行われていくでしょう。とはいえ、何よりも重要なのは、実際に、必要なタイミングで、じっくりと話を聞いてもらえる体験と時間です。
利用者や家族の立場からみて、話したい・聞いて欲しいタイミングで丁寧にしっかりと説明を受けられ、話を聞いてもらえたという実感と経験を得られることが、国民のACPへの意識や興味を変えていく契機になるでしょう。親御さんでしっかりしたACPを経験することで、その子は自分に引き寄せて考えることもできるようになるはずです。
とはいえ、「今は先のことを直視できない」「まだ考えたくない」ということも、表明された大切な意向の1つであり、ACPの一部になり得ると考えます。
ACPは決して、住まいや命をどうするかという大きな判断ばかりではありません。日常のたあいもないことがらのケアの選択も含まれます。いつから初めて良いか分からない、実際にACPを行う中で生活や人生を切り離した話合いはかえって難しい、という声も聞かれます。
アドバンス・ケア・プランニングを考えることは、時にアドバンス・ライフ・プランニング=ALPに踏み込むことでもあります。ACPとALPの両者を混同しないように、しかし意図的に両方の関係を理解しつつ話を聞く場面も出てくるでしょう。
ケアマネジャーはACPにおいて大きく期待されています。新たな法定研修のカリキュラムには、すべての研修課程に「倫理」の科目が組み込まれました。これからは一層、ケアマネジャーにとって倫理的感受性を備えることが重要になりそうです。