来年度の介護報酬改定に向けた議論を進める審議会の24日の会合 − 。深刻な人手不足にどう立ち向かうか、が大きな課題として共有されたが、そのプロセスで委員の1人がある言葉に疑問を投げかけた。
介護現場の「生産性向上」だ。【Joint編集部】
「生産性向上という言葉を国が何度も繰り返し使っている。介護現場の方々とお話をさせて頂くと、その言葉への拒否感のようなものを強く感じる」
石田路子委員(NPO法人高齢社会をよくする女性の会理事|名古屋学芸大学客員教授)はこう問題を提起。「我々はこうした審議会で介護現場を良くするための議論をしているわけだが、それが介護現場の方々の心に響かなければまずいかなと。もう少し文言にもこだわった方が良いのではないか」と指摘した。
介護現場の生産性向上は、政府がこの分野の重要施策を説明するために頻繁に使っている言葉。厚生労働省は今回の審議会でも、次の改定の基本的な視点の1つに生産性向上を掲げていた。
その意味は、テクノロジーの活用やサービス提供の合理化・最適化などに取り組んで職員の負担軽減、働く環境の改善を実現すること、それによって利用者に対するケアの質を高めていくこと、とされている。埼玉県立大学の田中滋理事長は厚労省のYouTubeチャンネルで、次のように解説している。
「要介護者が尊厳ある生活を送ることが目標。介護の生産性向上とは介護の価値を高めること。間接業務を減らし、利用者と触れ合う時間を増やすこと」
審議会で石田委員はこうした趣旨を踏まえ、「より分かりやすい『業務改善』という言葉を使えば、介護現場の方々もストンと納得して頂けるのではないか。よりシンパシーを感じて取り組んで頂けるのではないか」と提案した。
介護現場の生産性向上という言葉をめぐっては、前回の4月の審議会でも同様の意見が出ていた経緯がある。
鎌田松代委員(認知症の人と家族の会理事)が、「趣旨はよく分かっているが介護現場にはなじまないのではないか」と指摘。「もっと相応しい言葉を使って頂きたい」と要請していた。