100超の介護現場を研究 高齢者のケアや場づくりに大切な「ことば」とは 9月2日から出版記念イベント@ZOOM
高校時代から10年以上、全国の介護現場を訪問してフィールドワークを続けてきた慶応大学の金子智紀さん(慶応大学SFC研究所/上席所員)。全国100以上の施設・事業所を行脚して、高齢者の生活を支えるうえで本質的に大切な30の考え方をまとめた「ともに生きることば」を出版した。取材に協力してくれた事業者らをゲストに招いた出版記念イベントを9月にオンラインで開く。【鈴木啓純】
「この本を読んで、よりよいケアを実践する意識が更に広がってくれれば嬉しい。自分にとって必要だと思う要素を取り入れて、それぞれが目指す姿へ近づいて頂ければ。そうした道標となれば何よりです」。金子さんは「ともに生きることば」に込めた思いをこう語った。
この本は、高齢者のケアや居場所づくりなどの質を高める観点から重要となる“共通のパターン”を、30個の「ことば」で紡いだもの。好事例を研究するプロセスで金子さんが書きためた1314枚の付箋がベースとなっている。日々の実践のあり方、ノウハウやコツ、その背後にある考え方、持つべき視点などを分かりやすく整理した実用的な内容だ。
ともに生きることば 高齢者向けホームのケアと場づくりのヒント
ともに生きることばカード(ケアと場づくりのヒント)
金子さんは、「介護など対人援助はマニュアル化しにくい。環境や相手との相性もある。でも共通する部分もあると思う。その部分を言語化している」と話す。現在も魅力的なケアの実践者へのインタビューを重ね、「何を大事にしているのか」を伝える研究にいそしんでいる。
「ともに生きることば」の出版記念イベントは9月2日と5日にZoomで開催する。両日ともに19時から21時までで参加費は無料。あおいけあの加藤忠相さんや未来企画の福井大輔さん、シルバーウッドの下河原忠道さんらが登壇し、日々の取り組みなどを紹介するワークショップが行われる。
金子さんが介護と関わることになったきっかけは高校の文化祭。「校舎の隣に建つ老人ホームの入居者を招く」という生徒会長の提案だった。当時、たまたま学校の近所に住んでいて副会長も担っていた金子さんは、「近所だから担当よろしく、という無茶ぶりから始まった」と笑顔で振り返る。
文化祭ではスケジュール調整などに奔走。華道部の展示や吹奏楽部の演奏、茶道会への参加などで楽しんでもらった。そうした経験を通じ、「介護の面白さが見えた。自分に何ができるのか。得意の研究でこの分野を支援していきたい」と思ったという。