人手不足にあえぐ医療・介護の現場に人材紹介会社が悪影響を及ぼしているケースがあるとして、対策の強化を検討していくとした14日の規制改革推進会議のワーキンググループ(WG)。内閣府は「提案事項の整理(案)」と題するペーパーで、今の問題意識や今後の論点などを提示した。【Joint編集部】
「提案事項の整理(案)」には何が書かれているのか、以下に改めてまとめた。資料のダウンロードは記事最後から。
《問題意識》
○ 医療、介護、保育分野の人材不足は今後も拡大を続ける見通し。厚生労働省が人材確保に向けた一定の対応を行っているものの、現状では必要となる人材を確保できる見通しが立っていない。
○ 人材紹介会社へ支払う手数料が高騰しており、これが早期離職や人材紹介会社の不当な行為と相まって、公費に依存する介護事業者らの経営を圧迫し、賃上げや生産性向上への投資を困難にすることで、一層の人材不足を招来する悪循環を招いていると指摘されている。
○ 日本の生産年齢人口は減少を続けると予想されており、医療や介護、保育のサービスを維持するためには抜本的な対応を検討する必要がある。
○ デジタルヘルスや関係職間のタスクシェアの推進などは論をまたない重要課題であるが、介護職の処遇改善や常勤・専従を前提とする基準の見直し、人材紹介事業の質の向上や適正な競争の促進などが必要となるのではないか。
○ 人材紹介会社は短期的に重要な課題であり、そのサービスの質の向上や適正な競争の促進を通じて、介護職員などの賃上げや前向きな投資につなげることが期待され、スピード感のある取り組みが必要。
○ その際、医療・介護の分野は利用料金転嫁が公定されるといった社会保障制度に伴う性格があるため、紹介手数料を料金に転嫁し、料金の引き上げを通じて人材ニーズが縮小するという意味での市場メカニズムが働かない特質も考慮する必要がある。
《具体的な提案事項》
(1)悪質な人材紹介会社への対策強化
○ 人材紹介会社に対する職業安定法の指針では、自らあっせんした就職者に対して就職後2年間は転職勧奨を「行ってはならない」ことや、お祝い金制度が「好ましくない」こと(社会通念上相当と認められる程度を超えた金銭の提供は「行ってはならない」こと)などが記載されている。
○ 一方で現実には、あっせん後の早期転職勧奨を行ったり、お祝い金制度を設けたりしている人材紹介会社が存在する。
○ 指針違反に対しては行政指導しか行い得ず、違反した人材紹介会社の公表も行われていない。
○ 職業安定法では求人者に対して手数料を明示することとされているが、「追加の手数料を払えば優先的に人材を紹介する」といった実態もあり、明示が必要な手数料の内容が不十分との指摘がある。
(2)人材紹介市場の透明性向上
○ 介護施設・事業所による人材紹介会社の合理的な選択を可能とし、あわせて人材紹介会社間の適切な競争を促すため、人材紹介会社を経由して入職した人の離職率、手数料の平均値・下限値などを、都道府県ごと、職種ごとに国が公表してはどうか。
○ 厚労省の人材サービス総合サイトにおける離職人数の公表期間(現在は2年)の延長も必要ではないか。
○ 職業安定法では、離職者の人数に関し情報提供を行わなければならないとされているが、「離職が判明せず」といった項目に大多数の紹介者の人数が記載されている企業もあり、不徹底との指摘がある。
(3)優良な人材紹介会社の選択円滑化
○「医療・介護・保育分野における適正な紹介事業者の認定制度(令和3年創設)」について、真に「適正な事業者」を選択できるよう認定基準の見直しが必要ではないか。例えば、採用後一定期間内(例えば6ヵ月以内)に離職した場合に手数料を返戻することを、認定基準に組み込むことなどが必要ではないか。
○ 人材紹介事業のあるべき内容(求人企業が求める人材に合った求職者の紹介)や離職率水準、手数料設定のあり方などを、認定基準に追加することも検討が必要ではないか。
(4)ハローワークの機能強化
○ 単なる普及啓発に止まらない実効性ある機能強化を行う必要があるのではないか。