要支援の高齢者らを訪問・通所などのサービスで支える市町村ごとの「総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)」について、厚生労働省は10日、新たに設置した「充実に向けた検討会」の初会合を開催した。【Joint編集部】
「多様な主体による多様なサービスの普及、という点で必ずしも十分に進んでいないとの指摘を受けている」
厚労省で介護保険を担当する老健局の大西証史局長は、冒頭の挨拶でこう問題を提起。介護予防の取り組みや生活支援サービスなどの重要性が一段と高まる今後を見据え、状況をなんとか打開していきたいとした。
厚労省は今年夏をメドに、具体的な手立ても盛り込んだ中間的な報告書をまとめる予定。それに沿った工程表も策定し、総合事業の充実を計画的に進めていく構想を描いている。国の財政に余裕がなく、マンパワーの確保も難しさが増しているなど制約が多いなか、現場を後押しする改善策の展開によるブレイクスルーを目指す。
◆ 担い手の確保策が最大の焦点
総合事業の特徴は、市町村がサービスの運営基準や報酬などを独自に決められるところ。相対的に状態の軽い高齢者の幅広い支援ニーズに応えられる体制を、地域の実情に応じてより柔軟に、より効率的に作れる制度設計となっている。
介護保険の今後をめぐる議論では、より効率的な仕組みへ転換すれば給付費の膨張に一定の歯止めをかけられることもあり、要介護1と2の訪問介護・通所介護を総合事業へ移すべきとの意見がある。政府は2027年度の制度改正までに結論を出す方針。今回の新たな検討会は、そうした大きな動きにも影響を与えていくことになりそうだ。
厚労省は10日の会合で、当面の論点(検討事項例)を提示。サービスの担い手の確保、多様な主体の参入を促進する方策を柱の1つに据えた。地域作りの推進やサービスの質の向上、利用者のサービス選択を支える仕組みの整備などもあげた。
老健局の担当者は、総合事業の進捗・効果をどう評価するかも論点の1つになると説明。「総合事業だけで考えるのではなく、他分野のサービスも含めてどのように評価するのか。地域共生社会の実現という大きな目標へ向かうためにもそういう視点が重要」との認識を示した。
5月31日に次回の検討会を開催する予定。民間企業も含めた現場の関係者を招いてヒアリングを行い、議論を更に深めていくとしている。